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自動車業界トピックス

WECARS、まずは法令順守や不祥事撲滅

販売立て直しを最優先して

旧ビッグモーターが伊藤忠商事など3社連合に買収され、新会社ウィーカーズ(田中慎二郎社長、東京都千代田区)が発足した。伊藤忠グループは自動車関連企業を多く持ち、さまざまな協業を探っている。ただ、新会社は当面、伊藤忠の傘下になったことによるメリットを生かして〝タマ(車)〟を確保し、主力である中古車販売事業の立て直しを急ぐことになりそうだ。

会見する田中社長(右)と山内副社長

ウィーカーズの山内務副社長は1日の会見で、「まず一丁目一番地はコンプライアンス(法令順守)、不祥事撲滅、教育指導」と強調し、さまざまな協業はその後という認識を示した。直近でも社内で複数の不祥事があり、処分者が出ていることを認めている。本業の中古車の販売状況も不祥事発覚前の3~4割程度にとどまっており、この立て直しができないと、協業による発展も難しいからだ。

全国250店舗の「ビッグモーター」という看板の掛け替えも時間がかかる。当面は今のままだというが、消費者の心理面での影響もありそうだ。

関係者によると、中古車事業者にとって、魅力的なのはニッポンレンタカーサービス(藤原徳久社長、東京都千代田区)だ。伊藤忠が3割を出資するリース大手の東京センチュリーの子会社で、保有台数は4万6千台に上る。また、伊藤忠エネクスが行っている中古車レンタカー事業「カースタレンタカー」も約3700台を保有している。これだけで、単純合算で約5万台になる。こうしたレンタカー車両の再販ルートを担えれば、安定した商品調達が可能になる。

通常のレンタカーは使用距離数も多く、必ずしもすべて良質な中古車になるとは言えない。ただ、レンタカー会社と中古車販売店で連携し、中古車でも人気の高い色や車種をできるだけレンタカーで使ってもらい、使用年数や買い取り価格なども協議して計画的なサイクルをつくることができれば「ウィンウィン」の関係になる。山内副社長も、協業の可能性がある関係企業の一つとして、東京センチュリーの名前を挙げていた。

また、「新車」の仕入れルートができることも大きいという。中古車ユーザーは代替時に、新車を求める場合もある。旧ビッグモーターも新車を販売してきたが、未使用車を安く売っているとして反発され、ここ数年は新車の仕入れが難しくなっていたという。伊藤忠エネクスは日産大阪(小林恭彦社長、大阪市西区)という関西で100店舗を持つディーラーをグループに持つほか「伊藤忠グループであればさまざまな仕入れルートがある」(関係者)との声もある。

伊藤忠商事の岡藤正広会長CEOは4月26日、日刊自動車新聞の取材に対してヤナセとの協業について「最初のうちはない。将来的な課題」と話した。当面は足元の本業の立て直しに注力する意向を示したとみられる。ただ、全国規模の中古車販売チェーンとなると安定的によい中古車を確保するのは最重要課題であり、グループ内で協業を始める上で取り掛かりやすいテーマになりそうだ。

(小山田 研慈)

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)5月7日号より