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自動車業界トピックス

整備業界、高まる値上げ機運 取引適正化や賃上げトレンドの今が好機

経費や人件費の負担は増すばかりだ

自動車の板金塗装や整備業界で値上げの機運が高まりつつある。業界団体が値上げに向けた取り組みや環境整備を進め始めた。特に中小・小規模(零細)の板金や整備工場などは横のつながりに乏しく、大手の損害保険会社やリース会社は手ごわい交渉相手だ。ただ、経費や人件費の負担は増すばかり。設備投資や従業員の待遇改善を進める上でも値上げ交渉の重要性が増す。今は政府も取引適正化や賃上げの旗を振っており「この機を逃してはいけない」との声が大きくなっている。

離職防止には賃上げが不可欠

全国自動車電装品整備商工組合連合会(電整連、紫関雅美会長)は、料金の適正化などに

リース車両の工賃単価は一般より低く抑えられている

組合が一丸となって取り組む2024年度の方針を初めて決めた。具体的には①労働賃金の見直し=賃上げ計画と実行の「見える化」②整備料金適正化の徹底③法令順守―を掲げた。

人材の確保と離職の防止に向けた賃金の見直しを図るとともに、適正な整備料金の請求や無償サービスの廃止などで、賃上げの原資となる利益の確保につなげる。同時に不正行為の撲滅や、内部通報体制の整備など法令順守の基盤強化も進める。

12日に開いた通常総会で紫関会長は「従来は事業者個々の課題が多かったが、賃上げや工賃アップ、法令順守はアフターマーケット業界が全体を挙げて対応すべき課題だ」と語った。この方針のもと、積極的な情報交換などを各組合に促していく。

日本自動車車体整備協同組合連合会(日車協連、小倉龍一会長)は、損害保険各社と団体協約の締結に向けた準備を進めている。

保険修理の算出に用いる「指数対応単価」は、過去に日車協連と損保側が一括交渉していた時代もあったが、公正取引委員会の警告を受けて以来、個別交渉になった。

薄利多売のリース車両整備

しかし、個別では値上げが容易に受け入れられない。日車協連は団体交渉の道筋を探り、中小企業庁や公正取引委員会から一定条件を満たせば「中小企業等協同組合法(中協法)に基づく団体交渉が可能」「団体協約の締結交渉は独占禁止法上、問題とならない」との解釈を引き出した。これを受けて、日車協連は指数対応単価を23年度比で17.5%以上引き上げるよう、損保各社と交渉に入る予定だ。

日本自動車整備振興会連合会(日整連、竹林武一会長)は7年ぶりにリース車両のメンテナンス取引に用いる工賃単価の調査を実施し、2023年度版「自動車整備白書」で公表した。

前回調査に比べて改善傾向にはあるものの、工賃単価の水準は一般客向けの6~7割程度にとどまる。薄利多売の「リース車両の整備が重荷」と感じる整備事業者がいまだに多い実態が明らかになった。

工賃単価は経営の機微(きび)に触れる情報で、事業者同士の気軽な情報交換が難しい側面もある。日整連は「あくまで参考」として調査しているが、リース会社との交渉に活用する事業者も出てきそうだ。

(村上 貴規)

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)5月18日号より