主要な中古車関連上場企業の2024年3月期の連結決算が出そろった。日刊自動車新聞が今回取り上げた8社のうち、5社が増収増益となった。新車の供給制約が回復し、下取り車の発生台数も増加したことで、中古車オークション(AA)や小売りなどが追い風になったことが大きかった。円安基調が続いたことで、輸出事業者も好調だった。各社は当面、こうした傾向が続くとみている。同期は旧ビッグモーター問題など中古車業界での不祥事が相次いだが、これらも落ち着くとみられる。安定した事業環境を見通せることから、2025年3月期は7社が増収増益を見込んでいる。
2024年3月期はカーチスホールディングスを除く7社の売上高が過去最高を更新した。
この伸びを下支えしたのは、中古車流通台数の回復だ。日本自動車販売協会連合会(自販連、加藤敏彦会長)と全国軽自動車協会連合会(全軽自協、赤間俊一会長)がまとめた同期の中古車登録・届け出台数は、前年比2.5%増の645万1230台となり、5年ぶりのプラスとなった。中古車市場に流入する商品が増えたことで、取引が活発になったのは間違いない。AA最大手のユー・エス・エス(USS)も同期の出品台数が同4.3%増の308万4千台だったことも、市場の力強さを裏付ける。
輸出事業者は一気に進んだ円安が、業績拡大を後押しした。2023年4月時点で1㌦=130円台だった円相場は、2024年3月末には同150円台となった。
もともと海外で人気の高い日本の中古車を買いやすくなったことで、輸出にまわる車両が膨らんだ。オプティマスグループは、貿易セグメントでの輸出販売台数が同46.9%増の6万5037台となり、過去最高益の更新に寄与した。トラストも輸出台数が同9.6%増の4968台と、前年を上回った。
一方、年間を通じて車両販売の需要が高まる3月の中古車登録・届け出台数が11カ月ぶりに下振れするなど、足元では不透明感も出ている。年明け以降に本格化したダイハツ工業の認証不正問題による出荷停止などが、響いたとみられる。「現在の落ち込みは一時的であり、緩やかに中古車市場も回復する」(USS)といった見立てが中古車業界では一般的で、各社は強気の通期予想を立てている。USSも2024年度のAA出品台数が、同0.5%増の310万台となるとみている。
また、旧ビッグモーター問題で揺らいだ中古車業界の信頼回復も徐々に進むとみられる。自動車保険金の不正請求や街路樹の枯れ死など、さまざまな問題が明るみになる中で、中古車事業者に対する消費者の見方は厳しくなった。カーチスホールディングスの長倉統己社長は「(2024年3月期の)前半はかなり苦戦した」と振り返る。ただ、旧ビッグモーターが新体制に移行したほか、業界各社も健全な事業運営をアピールしてきたこともあり、顧客の見る目も変わってきた。ファブリカホールディングスの谷口政人社長は「現時点で落ち着きを取り戻しており、悪い影響はほぼなくなっていくだろう」とみている。
(舩山 知彦)
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)5月28日号より