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自動車業界トピックス

自動車業界 「走行距離課税」に懸念

簡素化、負担減に逆行

 21日に閣議決定された2019年度税制改正大綱では、車両の走行距離に応じて課税する“走行距離課税”の考え方も視野に入れて自動車諸税の体系を抜本的に見直すことを今後、検討していくことが明記された。「保有から利用」というユーザーの車に対する意識変化を前提とした新しい税制という。ただ、こうした制度は、自動車業界とユーザーが求める税体系の簡素化・負担軽減に逆行するという声が各方面からあがっている。中長期的に新車市場と保有台数の縮小が心配される中、新たな税が自動車の利用を抑制する材料となり、日本の産業全体の勢いを落としかねないという懸念もある。

豊田自工会会長は走行距離課税に断固反対の見解を示した(20日、自工会定例会見にて)

 今回の自動車税制改正議論で正式に検討課題として浮上した走行距離課税。政府や財務省、総務省などは、新しい税によってカーシェアリングやMaaS(サービスとしてのモビリティ)など「保有からシェア」に移る市場構造の変化に対応した税体系の改革を目指したい方針だ。
例えば自家用車とタクシーやバスなど商用車、自家用車とMaaS車両をとっても走行距離は大きく違う。地方は走行距離が多く負担が大きくなるのは明白だ。「シェアリングや電気自動車(EV)などの普及で従来の課税対象は細り、税収も減収する」(自民党議員)との論理は「自動車産業を納税産業と見ておられる方々の論理」(日本自動車工業会・豊田章男会長)でしかない。
全国軽自動車協会連合会(全軽自協)の堀井仁会長は、今回の税制大綱で走行距離課税の話が出たことについて「本来議論すべきこと、来年以降に議論すべきことがごちゃ混ぜになっている」と不満を隠さない。自工会の川口均税制委員長も、「税体系で市場構造や車の売れ方が変わるのは世界中どこを見ても明らか。日本としての意思で車の高度技術や環境性能を総合的に高めていくのなら、シンプルで過重な負担がないかたちにしていくことが大切だ。新たな税体系を生んでまた複雑にするのですかと問いたい」と走行距離課税の検討が浮上していることに苦言を呈した。
自動車メーカーなどは、人口減少、少子高齢化にともなう新車販売や保有台数の減少が見込まれる中で、入庫台数の拡大や回転率の引き上げによってビジネス基盤の確保を図るアフターサービスのリテンション(既存顧客の維持)に取り組んでいく考えがみられる。その取り組みのカギとなるのが、顧客の車の稼働率。
中長期の検討課題にあげられた走行距離課税は、車の稼働率向上とは逆行した税負担になりかねない。将来的に、国内市場の縮小トレンドが避けがたいものの、車をいかに保有してもらい利用してもらうかを考えれば、保有に係る税体系の簡素化と負担軽減を進めることが必要だ。

  ※日刊自動車新聞2018年(平成30年)12月25日号より