10月の消費税増税まで残り約7カ月。需要の平準化対策として4月から取得税の税率軽減の縮小が始まるが、消費税増税に向けて税制がより複雑となることで、新車ディーラーでは顧客に“買い時”を提案することが難しくなってきている。23日に都内で開催された日本自動車販売協会連合会(自販連)の60周年祝賀パーティーに出席したディーラートップの多くは「まだ駆け込み需要はない」と話すが、納期が長期化しているトヨタ系ディーラーからは「駆け込みが起きてからでは対応できない」と危惧する声も上がっている。10月以降の反動減を避けるためにも駆け込みは抑えたいところだが「増税前の商機を逃したくない」という本音も垣間見える。
◆足元は堅調
足元の新車販売は堅調だ。2018年の実績は上期(1~6月)でマイナスとなったものの、夏以降に巻き返し2年連続で500万台を超えた。ただ、自販連の小関眞一会長は「限られた新型車や人気車種が新車販売をけん引する構図で、全体の底上げとは言えない」と分析する。
消費税率引き上げまで約半年となるが、駆け込み需要は「まだない」(群馬トヨタ横田衛社長)とする声が多数だ。ただ、「実感できるような水準ではないが、緩やかに駆け込みは起こっていると思う」(トヨタ東京カローラ西利之社長)、「まだ多くはないが、消費増税を理由に購入を決めるユーザーも増えてきた」(北海道日産原田彦エ門社長)、「(追い風の)微風程度吹いているのではないか」(名古屋・三河ダイハツ坪内孝暁社長)といった声も聞こえる。
10月の消費税増税のタイミングで、自動車取得税に代わり「自動車税環境性能割」が導入される。これに先立ち、取得税は4月から9月末までの間、一部車種の減税幅が縮小される。税制が複雑となることで「車種によっては増税前後で差が出てくる」(トヨタカローラ南信、ネッツトヨタ信州西田善之助社長)、「主力のCX―5などに搭載されるディーゼルエンジン車は、増税前に購入したほうがお得になる」(神戸マツダ橋本覚社長)ケースも出てきている。購入を悩む顧客に対しては「(増税の影響を)しっかり伝えてお勧めしていく必要がある」(同)と指摘する。複雑な税制によって、多くの新車ディーラーでは、購入時期で税金の差がどの程度あるのかをシミュレーションできるソフトを導入し、買い時の提案と事後のトラブルが出ないよう対策を進めている。
◆商機逃さぬよう
駆け込み需要が発生する時期としては「ゴールデンウィーク明けくらいから影響は多少出てくるのでは」(名古屋トヨペット横井克一郎専務営業本部長)と予測する声がある。ただ、5月のタイミングでは増税まで半年を切ることから「納期に時間がかかる車種の場合、対応できないケースも出てくる」(NTPホールディングス、名古屋トヨペット小栗一朗社長)ことが想定される。
購入意思があっても納期まで意識しているユーザーは少なく、特にハイブリッド車を中心に納期が長期化しているトヨタ系では「納期を考えながら現時点で顧客への代替え提案を行っていかないと、トラブルになる可能性がある」(東北地区トヨタ系)。
これまで、消費税増税の引き上げ時期は4月であったため、駆け込み需要と年度末商戦と重なることで必然的に需要の“山”が高くなり、4月以降の反動減の“谷”が深くなった。今回の10%への引き上げは期中であることに加え、環境性能割と需要の平準化対策の導入によって見通しが立てにくいところがある。多くのディーラートップは反動減を誘因する極端な駆け込みを歓迎していない。ただ、新型車の投入効果による需要の盛り上がりも期待される中、商機を逃さないよう販促活動に力を入れている。
※日刊自動車新聞2019年(平成31年)2月26日号より