日本自動車整備振興会連合会(日整連、竹林武一会長)がまとめた「平成30年度版自動車整備白書」で、自動車整備業を取り巻く経営環境の厳しさが増している実態が明らかになった。総整備売上高は2年連続、増加しているものの、少子高齢化社会の本格到来で自動車の保有台数の大きな伸びが見込めない中、いかにして整備需要を獲得していくのか、また、人材不足や新技術にどのように対応していくのかなど、整備業界は課題が山積している。
整備業の実態を把握するための「平成30年度調査」によると、総整備売上高は5兆5295億円となり、前年度比0.8%増と、2年連続で増えた。白書によると、これは自動車産業だけでみると「自動車保有台数、新車販売台数が増加したことにより、車検・定期点検・その他整備の売り上げが増加した。事業者の努力により、総売上高の増加に結びついた」と分析している。整備要員一人当たりの平均売上高は1394万円で、同0.6%増と増えたものの、総売上高より伸び率は低かった。
一方で、継続検査台数は同1.5%減の3249万台となり、3年ぶりに減少に転じた。消費者のクルマに対する意識が「保有」から「利用」へとシフトしており、カーシェアやレンタカーなどを活用することで、自動車を保有しない人が増えているためと捉えている。こうした動きは今後も加速し、継続検査台数は今後も減少していくと予想している。
こうした中、先進運転支援技術(ADAS)などの新技術を搭載した車両や、長期使用車両に対する点検整備需要は伸びると予想、整備事業者が早期に、こうした整備需要への対応力を強化することが求められている。 国内の整備要員数は、39万9374人と、前年度と比べて0.1%減と微減だった。整備要員の平均年齢は45.3歳で前年度と比較すると0.3歳上がった。また、自動車大学校・整備専門学校の入学者数は減少が続いており、整備従事者の高齢化が本格化する見通しだ。若者を整備業に惹きつけるため、従来の整備士のイメージを払しょくしようと各種団体や企業が一体となって取り組んでいる。整備要員一人の年間平均給与は391万1千円、同0.9%増と、6年連続で増えた。整備業は、顧客の確保や売り上げ増に加え、人材確保や教育を含め、将来に向けた経営基盤確立に向けた取り組みを一層深化させていかなければならない時期に差しかかっている。
次回から、整備業の実態から見えるさまざまな課題や今後の見通しについて、整備白書をベースに、より深く掘り下げていく。
※日刊自動車新聞 2019年(平成31年)4月17日号より