2020年の自動車産業が始動した。今年は自動運転や電動化などCASE関連の開発が加速し、領域ごとに企業やグループの優劣が表れ始めそうだ。一方、年明け早々に米国によるイラン司令官殺害のニュースが飛び込み、世界的な新車販売の減速が続くなど、経済と市場には不透明感が漂う。7日の自動車4団体賀詞交歓会で、各社首脳に展望を聞いた。
質問① 自動車産業の今年の展望は
質問② わが社の変えたいところは
トヨタ自動車 内山田 竹志会長「FCV、素早くワンサイクル回す」
①燃費規制は各国とも年率3%ぐらいで厳しくなる。電気自動車(EV)でも対応できるが、自動車メーカーはどこもEVで黒字ではない。ZEV(ゼロエミッションビークル)とかNEV(新エネルギー車)の規制に対応するだけだ。CAFE(企業別平均燃費)はハイブリッド車(HV)、それもストロングHVだろう。
②燃料電池車(FCV)について「ワンサイクルを早く回せ」と社内に言っている。FCVにしろ全固体(電池)にしろ、一生懸命にテストはするが、(市場に)出してみないとわからない。どうせ1サイクル目は安くできないので、品質と性能をきちんとして出す。その経験があると2世代目に早く移れる。
ホンダ 八郷 隆弘社長「成長に向けた進化テーマに変革を」
①明るいとは見ていない。中東情勢の影響など不透明な部分は多い。また、北米では新NAFTAの発効も控える。当社としては、米国の生産性を高めることに専念していきたい。
②今年のテーマは「成長に向けた進化」。自動車業界としての変革、成長に向けて社内の仕事のやり方などを進化させる。働き方については、女性、ベテラン、若年層がより活躍できる職場環境をつくっていく。
スズキ 鈴木 俊宏社長「100周年に向けて基礎体力をつける」
①自動車業界に関してはアメリカと中国、アメリカと中東といった、アメリカとどこかの国の関係で影響が強く出ると思う。ただ、年末の(大統領)選挙などで今後の予測が難しい。為替の問題も大きく広がるし、何があるかわからない時代になった。
②今年は100周年に向けて、会社の基礎体力を付けたい。5年から10年が肝心だと思う。良いところは残す、良くないところは変えるといった、会社としてのあり方を考えたい。ハスラーもそうだが、二輪でも盛り上げていきたい。
マツダ 丸本 明社長「〝目的〟志向の仕事へと変えなければ」
②「目標」志向ではなく「目的」志向へと仕事のやり方を変えていかなくてはならない。何のために仕事をやっているのか理解できていなければ、やりがいや夢も生まれてこないだろう。もちろん中期経営方針で数値目標は掲げているが、なぜそれを目指しているのかしっかり理解できているかが重要だ。創業100周年の節目には従業員にそういったメッセージを届けていきたい。
ダイハツ工業 奥平 総一郎社長「予報ズバリ〝晴れ〟 DNGAで飛躍へ」
①2020年を天気予報で言うとずばり「晴れ」だ。昨年投入した「DNGA」で飛躍する年としたい。当社がメインとするASEAN(東南アジア諸国連合)はまだまだ成長のポテンシャルは高い。足元は弱含みではあるが、いつまでもこうした状況は続かない。
②自動化や電動化対応については今後もコストがかかってくるだろう。そこはトヨタ自動車と一緒に進んでいきたいと思う。
三菱自動車 加藤 隆雄CEO「新技術対応などを考えて選択と集中」
①2020年は一言でいうと難しい年になる。世界情勢は不透明だ。国内も消費増税の影響がいつまで続くかわからない。ただ、五輪でクルマの需要は高まるかもしれないが、その後の先行きもわからない。明るい材料はなかなかない。
②来年度には新たな中期経営計画が始まる。車種やパワートレインでいえばSUVやPHEV、地域でいえばASEANが当社の強みだが、新技術対応、規制対応を考えながら、より選択と集中を進めていく。
日野自動車 市橋 保彦会長「車の稼働止めないサービスで絆強化」
①世界経済の先行きが読みにくい状態は今年も続く。ただ、厳しい中でも、車の稼働を止めないサポート、ドライバー不足や積載率の低下などの社会課題を解決するといった取り組みでユーザーとの絆を強くし、日野のファンを増やすことで困難な状態をチャンスに変えたい。
②ユーザーに近いところでの取り組みをさらに加速し、社会に貢献することで従業員がやりがいを持てる事業運営を進めていきたい。
三菱ふそうトラック・バス ハートムット・シック社長兼CEO「モダンで高品質なサービスを提供」
①主要市場のインドネシアは回復傾向にあるがインドはまだ難しい状況。中東は回復傾向がさらに進むだろう。米国は販売リスクが懸念されるが非常に限定的なもの。日本は安定した需要動向とみる。
②国内販売拠点の支店。これまでも取り組んできた支店の大規模リニューアルや新設を今年も継続して全国で行い、モダンで高品質なサービスを提供する。電動化とコネクテッドの強化に伴い、(アフターサービスなど)受け入れ体制の準備も進める。これは大きな変化で、たくさんの可能性を持つ。顧客満足を高め大きく成長したい。
UDトラックス 酒巻 孝光社長「異文化・考え方を受け入れて調和を」
①グローバルの商用車市場、経営環境は総じて厳しい情勢とみている。また今年は各国でトップの選挙が相次いで予定されている。米国や中国を代表するように主要国の政治、外交の影響を従来以上に注視しながら考え(経営の舵取りを)決断していく必要がある。日本は昨年と比べれば多少良くなるだろう。
②ダイバーシティとグローバル化。これまでも取り組んできたが、もっと伸ばしていきたい。異なった文化やものの考え方を受け入れて調和していくことで働き方改革にもつながる。
※日刊自動車新聞2020年(令和2年)1月9日号より