新型コロナウイルスの感染拡大に伴う国内外の新車需要の落ち込みが、自動車メーカーの国内工場の稼働判断に影響を与えている。自動車メーカー各社による国内の生産調整は3月下旬から本格化し、5月の連休明けも生産調整が続く。問題の収束時期が見えず、各国の外出制限措置が長引き、消費を冷え込ませている。輸出比率の高い企業を中心に、需要の不透明さを主因に追加の国内稼働停止に踏み切る動きが出ている。
中国湖北省武漢市に端を発した新型コロナウイルスはパンデミック(世界的大流行)を引き起こし、各国の自動車の生産と販売にマイナスの影響を与えている。欧州連合(EU)26カ国の3月の新車販売台数(乗用車)は前年同月比で55.1%減り、日系自動車メーカー6社の3月の米国販売も軒並み減少するなど世界的な需要の落ち込みが鮮明になってきている。
マツダの2019年暦年の国内生産台数は約100万台で、このうち輸出台数は約80万台だった。マツダは当初、3月28日から4月30日までの稼働日のうち13日間、本社工場(広島市南区)と防府工場(山口県防府市)の操業を中止する対応をとっていた。
感染拡大に歯止めがかからず、各国の販売活動に大きな影響が出ていることや需要見通しの予測が困難なことから、両工場で5月29日までの期間、断続的に生産調整を行う。「3月下旬に比べて部品調達状況は改善傾向にある」(マツダ)とサプライチェーンの状況は回復しつつある一方、北米や欧州など国内外の需要の落ち込みに対応し、生産調整を行う。
スバルは、群馬製作所(群馬県太田市)を対象に4月9日から5月1日まで稼働日ベースで19日間操業を一時停止する。合わせて、5月11~29日までの期間、生産調整も行う。国内生産に占める輸出比率は8割で、米国や欧州、中国などに振り向けている。稼働停止措置の理由として「部品調達リスクを抱えている」としつつも「海外の需要低迷も要因にある」(スバル)という。
海外だけでなく、日本国内の需要に対しても先行き懸念の声が挙がる。ダイハツ工業は4月下旬から5月にかけて本社工場(大阪府池田市)、京都工場(京都府大山崎町)、滋賀第2工場(滋賀県竜王町)で生産調整を行う。稼働停止理由は基本的には東南アジアでの部品調達の一部に影響が出たためだが、「国内の需給状況にも影響が出始めている」(ダイハツ)として、5月の大型連休前後で生産調整を行う。
感染症の問題がさらに長期化すれば国内外の新車需要の先行きの不透明さが増す。ホンダは「今後の需要動向を慎重に見極める」とし、状況に応じて柔軟に対応する構えだ。