車検チェーン各社が、特定整備制度への対応を模索している。将来的に先進運転支援システム(ADAS)機能の進化や搭載車両の比率が高まっていくことが確実とは言え、現時点では特定整備の対象車種は少なく、エーミング(機能調整)が必要な車両の流通台数も多くない。エーミングには相応の設備、ノウハウ、時間が必要で、コロナ禍もあって各社とも加盟店への情報提供や研修などの機会創出に苦慮している。
特定整備への対応に、車検チェーン各社とも前向きな姿勢を見せている。「われわれは行政の動きに追随する必要がある。加盟店には認証取得を推奨していきたい」と、速太郎本部の高木芳郎社長は話す。
ただ、エーミングには専用の機械や作業スペースが不可欠。作業時間も整備士が習熟するまでかなり必要になるため、生産性向上が求められている。車検チェーン本部も十分な知見を持っていない。チャレンジグループの川井義昭会長は「グループとして統一したエーミング料金設定は難しいが、ユーザーに費用を請求することは徹底したい」との考えを示す。
現状の入庫台数の多くがADAS未搭載車であることも対応を遅らせる要因の一つだ。車齢の新しい車は新車ディーラーに入庫し、車検チェーン各社には比較的年式の古い車両が入庫するケースが多い。衝突被害軽減ブレーキなどは採用から数年経過するが、車検チェーン各社への入庫台数の比率はそれほど高くない。
特定整備の対象車種は現時点で11社71車種。国内流通台数から見ると数%程度とみられる。「車検の実施項目にエーミングが入っているわけでもないので、対応は加盟店の判断だ。ただ今後は認証を取得しないと仕事にならないため、早期の認証取得を呼びかけている」(アップルグループの野口勝久会長)のが現状だ。
※日刊自動車新聞2020年(令和2年)11月19日号