世界的な半導体のひっ迫が自動車生産に影響を及ぼしている。ホンダや日産自動車が半導体の調達難を理由に国内で減産に踏み切り、トヨタ自動車も米国で一部車種の生産を減らすなど海外生産にも影響が広がっている。その他のメーカーも部品の調達状況の一部に支障が及ぶなど生産計画を精査している状況だ。足元では影響が及んでいないサプライヤーからも、半導体不足の長期化を懸念する声が上がっている。現時点で減産規模は大きくないが、コロナ禍の需要低迷から販売が徐々に持ち直す中、半導体の供給不足が続けば自動車産業の回復に水を差す恐れがある。

半導体の供給不足が自動車産業に水を差す(写真はイメージ)

半導体市場はコロナ禍で自動車向けが落ち込む一方で、パソコンやスマートフォン(スマホ)、第5世代移動通信システム(5G)関連の需要が拡大。その後、自動車需要の回復によって、半導体の生産能力がひっ迫している。国内の半導体メーカーは「半導体の組み立て工程などを委託している場合、委託先が集中している」と、供給のボトルネックを指摘する。さらにスマホ向けなどが優先され、自動車産業がそのあおりを受けているために半導体不足が発生しているもようだ。

国内ではホンダと日産が、主力車で数千台規模の減産に乗り出す。ホンダは米国や中国でも半導体不足の影響で生産調整を行う。スバルは一部の部品供給に影響が出てきており、スズキは一部車種で生産を減らす見通しだ。トヨタやマツダ、三菱自動車、ダイハツ工業は現在状況を精査中としており、各社とも生産影響は避けられないものとみられる。

販売の最前線でも減産の影響が表面化している。日産系ディーラーからは「新型『ノート』の納期がお客さまに伝えられない」との声が上がっている。また、ホンダ系ディーラーでは「年度内の納車予定が半導体不足で4月に遅れることになったが、その後、3月に納期が早まった」と一部で混乱が生じている。

アイシン精機の伊勢清貴社長は8日の年頭会見で半導体不足について「当面は当グループとして出荷が滞ることはないところまでこぎ着けているが、今後どうなるかという心配はしている」と、供給の先行きに懸念を示した。米国や中国での減産が伝えられたホンダ系サプライヤーは「明確には見通せないが、半年くらいはこの状況が続くのでは」と危惧する。