日本の自動車メーカーは、国内にとどまらず、北米や欧州、アジア、中南米などグローバルに生産拠点を展開しています。日本の自動車メーカーが2018年に海外で生産した四輪車は、1997万台で、海外事業が各社の経営を支える重要な収益源となっています。自動車メーカーの進出に合わせて、部品メーカーも海外に工場を設置しており、完成車工場の近くで部品を造って供給する体制を整えています。
自動車メーカーが海外に工場を持つのは、現地の供給ニーズに素早く応えることや為替リスクを減らすことなどが目的です。1990年代から北米を中心に生産台数を拡大してきました。リーマンショックをきっかけに、急な円高が進行したこともあり、輸出から現地生産に切り替える動きが、さらに加速しました。2018年には09年の約1千万台から倍近くにまで増えました。
近年は、中国や東南アジアを含むアジア地域の生産台数が大きく伸びています。18年のアジア地域の生産台数は1990年代前半と比べて約10倍。特に、中国とインドの市場は大きく成長しており、トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなどが生産能力の増強を進めています。
ただ、需要地の近くで生産するという戦略には海外のさまざまなリスクも伴います。米中間の貿易摩擦や北米自由貿易協定に代わる米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)、英国の欧州連合(EU)離脱などを受け、今後各社の拠点方針にも影響が出る可能性があります。さらに、新型コロナウイルス感染拡大も海外事業を継続する上で重要なリスク要因として急浮上しています。2019年末に中国湖北省武漢市で発生して以降、パンデミック(世界的な大流行)を引き起こした新型コロナウイルスは現在、各社の国内外の生産活動に大きなインパクトを与えています。
※日刊自動車新聞2020年(令和2年)4月16日号より