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よくわかる自動車業界

自動車業界入門 ㉑バス・タクシー

今年の旅客自動車運送業界は、オリンピック・パラリンピックの開催を控え〝おもてなしの最前線に立つ業界〟との誇りを胸に期待を高めていました。インバウンドを中心に旅客増が見込まれ、特にバス業界は、オリパラ関係者輸送で車両数2千台、運転者数3千人を集めるなど準備を進めてきました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大が業界の状況を一変させています。

外出自粛の浸透で乗客が激減し、貸し切りバスの運行中止や高速路線バスの大幅減便、タクシーの稼働車両数削減が行われています。そのため、運転手不足は解雇や自宅待機などにより急速に緩和し、逆に雇用不安が広がっています。各事業者ともコロナ問題収束後の需要回復、運転手不足の再燃を予想していますが、収束の見通しが立たないことから、中小事業者の中には事業継続の断念までつながる恐れもあるとして警戒感が広がっています。

 これまでの路線バス業界は、人口流入で乗客が増えている都市部と、少子高齢化が深刻で路線網維持が困難になりつつあった地方で明暗が分かれていました。この傾向はコロナ問題後も続くと思われます。また貸し切りバス業界は今後、外国人対応ができる乗務員を増やすなど一層のサービス向上が求められています。

タクシー業界は、運転手の高齢化問題が悩みです。一方で、大手事業者を中心に、大学新卒者ら若年層や女性の採用に力を入れており、都内法人タクシー運転手の平均年齢は3年連続で下がるなど、明るい兆しも見られます。

現在、各地で大手事業者を中心に、ITを利用して鉄道や航空なども含めたあらゆる交通手段を一つのサービスとしてつなげる「MaaS(サービスとしてのモビリティ)」の実現を目指して実験が行われています。ハード面では、ユニバーサルデザイン車両(フルフラットバス、UDタクシー)や連節バス車両など最新技術・仕様を備えた車両の導入が進んでいます。

※日刊自動車新聞2020年(令和2年)5月25日号より