目的地まで最短距離で移動できる「空飛ぶクルマ」の機体開発に注目が集まっています。電動かつ自動操縦で垂直離着陸型モビリティを指すことが多く、1、2人ほどの少人数乗車を想定した機体がほとんどです。ドローンに人が乗れるよう大型にしたタイプや、折り畳み式プロペラを搭載して通常はタイヤで道路を走行できるタイプなど、さまざまあります。
空飛ぶクルマを実用化すれば、都市部での渋滞や過疎地での交通弱者対応といった問題に対して、莫大なインフラ投資をせずに解決できる可能性があります。一方で、技術的課題に加え、法整備や社会受容性の改革など、さまざまな課題があります。
自動制御を前提としているため、操縦士は必要なく、ヘリコプターに比べ維持費が安いと言われています。ただ、人を乗せて飛行するために、通常の自動運転車やドローンよりもさらに高いレベルの安全性が求められることになります。また、長い距離を飛行するために、バッテリー技術の向上や機体の軽量化などにも取り組む必要があります。
また、空飛ぶクルマの機体開発には膨大なコストがかかります。大手自動車メーカーがベンチャー企業に出資する例がグローバルで見られますが、災害時などにも活用できることを考えると、公的支援体制の整備も不可欠といえます。
経済産業省は、空飛ぶクルマの実用化に関するロードマップを制定し、2023年の事業開始、30年代の本格的な普及を目指しています。
国内では、トヨタ自動車やNECなどがスポンサーを務める「スカイドライブ」が19年12月、日本で初めて空飛ぶクルマの有人飛行試験を開始しました。
今後は、導入する地域などの人々に受け入れられるよう、空飛ぶクルマの安全性や社会発展における重要性などを周知していく活動にも取り組む必要があります。
※日刊自動車新聞2020年(令和2年)6月9日号より