第5世代移動通信システム(5G)は、今年から商用サービスが本格スタートした無線通信システムのことです。通信システムは携帯電話などの通信機器の普及にともなって進化してきました。1G~2Gは場所を問わずに通話ができる通信環境を実現し、2001年に登場した3Gでは音質の向上や写真の送受信が可能になりました。スマートフォン(スマホ)の普及で4Gに移行し、通信速度の高速化などが図られました。
5Gは、4Gと比べて「高速」「大容量」「多接続」「低遅延」がメリットとして挙げられます。4Gではダウンロードに5分かかっていた2時間の映画を、5Gでは3秒でダウンロードすることができるようになります。
5Gで自動車業界も大きく変化します。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる新技術の登場で、自動車は車両内外で膨大な通信を行う必要が出てきました。例えば機械が運転の主導を担う自動運転下では、車両周辺の歩行者、対向車などの情報を車載センサーで把握し、電子制御ユニット(ECU)といった制御システムに伝達する必要があります。また、行き先の天候や事故情報などの情報を外部のネットワークと接続して取得することも求められます。膨大なデータを瞬時に伝達するには、5Gの存在は欠かせません。
一方で、基地局網の整備などが進んでおらず、5Gの本格的な普及には時間がかかるとの見方が大半です。このような背景もあり、限定されたエリアでの使用を想定した「ローカル5G」が先行するとみられます。ローカル5Gは自治体や企業などが地域や個社単位で活用できるシステムで、すでにVR(仮想現実)やAR(拡張現実)を活用した工場施設内での生産性向上策などを進めている企業もあります。
※日刊自動車新聞2020年(令和2年)6月11日号より