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自動車業界トピックス

自動車メーカー各社、重要性増す電動車の給電機能 突発的な大規模災害時に威力

緊急時に円滑に給電作業できるよう情報発信も強化

自然災害のリスクが高い日本で、給電機能を備えた電動車の重要性が増している。13日夜に福島県沖で発生した地震のように、突発的な災害が大規模停電を引き起こす可能性が今後もある。自動車メーカーは、走る蓄電池として電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)を迅速に派遣できる体制を整えるとともに、給電能力向上も進める。足元で、電動車の販売が回復していることから、ユーザーが緊急時でも円滑に給電作業できるよう情報発信も強化する。

三菱自のPHVはさまざまな家電への給電に対応できる

三菱自動車は災害時に自治体に電動車を派遣することを目的に2019年8月に「DENDOコミュニティサポートプログラム」を始動し、災害時協力協定の締結数は現在100件に上る。自治体からの要請に基づき、系列販社と連携して指定された場所にプラグインハイブリッド車(PHV)「アウトランダーPHEV」や「エクリプスクロス」のPHVモデルを貸し出す。1月の大雪の影響により秋田市で大規模停電が起きた際には、災害協定に基づき電動車を貸与して給電を行った。

日産自動車はEVを通じて地域課題の解決を目指す「ブルー・スイッチ」の取り組みが100件を超えた。18年9月に東京都練馬区との間で結んだ協定を皮切りに全国の自治体や法人と連携の輪を広げた。また、九州を中心とした「令和2年7月豪雨」の際には、熊本県八代市の球磨川温泉鶴之湯旅館へ「リーフ」を派遣するなど、この枠組みにとらわれず被災地ニーズにも柔軟に対応した。

トヨタ自動車は、昨年12月に全面改良したFCV「MIRAI(ミライ)」で給電能力を高めた。FCVの給電機能でEVとの最大の違いは水素で〝発電〟する点だ。新型車は航続距離を延ばすため水素タンクは旧型の2本から3本に増やしたがこれにより給電時の電力供給量も高められた。

トヨタは新型ミライの給電能力を高めた

フロントフード下のコンパートメントに設置したDC(直流)給電アウトレットに別売りの外部給電器を接続することで大容量給電を行う。電力量は旧型比25%増の75㌔㍗時に高め、多くの電力を必要とする災害時での活用も想定する。外部給電機能使用時も車内のアクセサリーコンセント(100㌾最大1500㍗)が利用できる。

トヨタはホンダと組んで移動式発電・給電システム「ムービングe」を開発。ホンダの可搬型給電器やバッテリーをトヨタの燃料電池バスに積載し、被災地にバスで移動し電気を供給する実証実験を開始した。水素で発電する燃料電池の強みを生かし、大容量の電力で災害支援に役立てる。

直近で電動車の人気が高まり、登録車と軽自動車を合わせた1月の乗用車の電動車販売台数は、前年同月比22.3%増と乗用車市場(同11.4%増)を大幅に上回った。ユーザーに対する給電に役立つ情報の提供も重要となる。三菱自の特設サイトでは、さまざまな家電製品の給電ができる点や家全体に電力供給する場合、最大約10日分の電力を確保できることなど、同社のPHVの特徴を周知している。また、政府や自動車メーカー、電力会社などは災害時に電動車を使う際のマニュアルを公表している。

国としても電動車を使った被災地支援の活動を強化。国土交通省は、電動車を派遣可能なディーラーと依頼側の自治体を円滑にマッチングするためのITツールを活用した仕組みづくりを検討し、実証を行う計画だ。

※日刊自動車新聞2021年(令和3年)2月20日号より