自動車メーカーのアジア販売で回復の兆しが見えてきた。アジア圏内でも国やメーカーによって回復の度合いに差は見られるものの、2021年3月期連結業績の通期見通しでは足元の状況を含めた新型コロナウイルス影響からの復調を見越して販売台数を上方修正する動きもみられる。トヨタ自動車が20年10~12月期でアジアの営業利益率10%超となるなど、欧州や米国に比べてアジアは稼ぐ力が強いだけに、アジアの販売復活はコロナ禍からの業績改善のカギを握ることになりそうだ。
20年暦年の新車販売では、中国が前年比1.9%減とほぼ前年並みとなり、世界市場で最も力強いコロナ禍からの回復ぶりを示した。一方で、東南アジア諸国連合(ASEAN)自動車連盟(AAF)の発表によるとカンボジアとラオスを除く8カ国の合計は同29.0%減と落ち込みが大きかった。ただ、12月にはマレーシアやタイが2桁増となるなど、地域によってばらつきはあるが需要は上向きつつある。
トヨタでは、20年4~12月期のアジアの販売台数が前年同期比32.4%減と他の地域に比べ大きく落ち込んだ。ただ、営業利益は同3.2%減の2916億円と、欧州や米国より利益額は多かった。さらに20年10~12月の3カ月では営業利益を同90.1%増と大きく伸ばし、近健太執行役員は「アジアの(前期より増益分の)700億円は中国と東南アジアで半分ずつ」と述べる。トヨタは通期の販売台数見通しを昨年の11月の公表値からアジアの5万台を含め10万台積み増ししており、2兆円の営業利益を確保する見通しだ。
マツダは、ASEAN圏内の通期販売台数見通しを11月時点と比べて1万1千台多い9万1千台に上方修正した。20年4~12月期はタイが前年同期比30%減の2万9千台、ベトナムが同7%減の2万台といずれも大きく落ち込んでいるものの、「もうしばらく我慢しないといけないと思っていたが、20年7~9月期から着実に回復した」(梅下隆一執行役員)。
スズキもアジア圏は比較的好調だ。20年10~12月期のアジアの販売台数は同7.4%増の52万4千台に増えた。主力のインドが同11.0%増の45万2千台とけん引したほか、タイも同46.7%増と大幅に増加。二輪事業やマリン事業を含むアジアの営業利益率は20年4~9月期時点で1.3%だったが、4~12月では3.6%に改善した。
通期見通しを上方修正したいすゞ自動車のけん引役もアジアだ。特にタイでは、20年10~12月期のピックアップトラックなどのライトコマーシャルビークル(LCV)の販売台数が同28.4%増の5万3千台に増えた。販売台数が急激に伸びたため、生産が追い付いていない状態が続く。
ASEANに強みを持つ三菱自動車では、20年4~12月期の同地区販売台数が同43.1%減の13万2千台と大きく落ち込んだ。新型コロナ拡大の影響度合いは「国によってまだら模様」(矢田部陽一郎代表執行役Co―COO)といい、インドネシアが同61.2%減、フィリピンが同47.9%減と落ち込む一方、ベトナムやマレーシアは回復基調にあると見る。
日野自動車は主力市場のインドネシアの20年4~12月期累計販売が同64.6%減と大中型と小型が苦戦しており「スローペースがしばらく続く」(佐藤真一取締役専務役員)見通し。一方、タイはeコマースの拡大により小型販売台数は同1.5%増と前年超えに回復した。
※日刊自動車新聞2021年(令和3年)3月2日号より