今秋に都内で開催を予定していた東京モーターショーの中止が決定した。日本自動車工業会の豊田章男会長は22日、オンラインで記者会見を開き、同ショーの開催中止を発表した。豊田会長は「東京モーターショーはリアルに見てもらうことにこだわってきた」と述べ、オンラインでの開催も見送り、イベントそのものも延期せずに中止とする。前回(19年開催)ショーで130万人規模に拡大したイベントをリアルに実施するのは、新型コロナウイルスの感染再拡大の局面では困難であると判断した。
同日開催した自動車メーカー各社のトップが参加する自工会の理事会で東京モーターショー中止を決定した。
自工会主催の東京モーターショーはこれまで隔年で開催してきた。前回のショーでは、東京オリンピック・パラリンピックに向けて会場が分散となったことを逆手に取り、お台場地域全体を会場として使い、規模を拡大。他産業を巻き込み、従来型の自動車軸だけではないイベントへと変化させた。先進国を中心に世界のモーターショーでは来場者人数が減少傾向にある中、東京モーターショーは一般向けのさまざまな企画が奏功し、来場者数は前々回(17年開催)の77万人から大幅に増えた。
今秋開催予定していた東京モーターショーは前回の成功を踏まえて「東京モビリティショー」(豊田会長)として、オンラインも使った企画も検討を進めてきたが、「安心安全な環境でモビリティの魅力を体感いただくメインプログラムの提供が難しい」(同)と判断し、中止を決定した。
コロナ禍において世界各地でモーターショーが中止に追いやられている。3月開催予定だったスイスのジュネーブモーターショーが中止になったのをはじめ、米国デトロイトで6月に開催する北米国際オートショーは9月に延期する計画だったが中止を決定した。一方、中国の上海モーターショーは19日から実会場で開催に踏み切っている。
国内における自動車関連の見本市では、自動車技術展示会「人とくるまのテクノロジー展(人テク展)」(5月開催)や、IT(情報技術)やIoT(モノのインターネット)関連の「CEATEC(シーテック)」(10月開催)がリアルとオンラインのハイブリッド開催とすることを決めている。
東京モーターショーの中止は、地方開催のモーターショーに影響が及びそうだ。東京モーターショー後に名古屋や大阪などで開催される地方ショーでは、東京で披露されたコンセプトカーや新型車を展示するケースが多いが、こうした企画に基づいたショーの実施が困難となる。
※日刊自動車新聞2021年(令和3年)4月23日号より