梶山弘志経済産業相は11日の閣議後会見で「グリーン電力が足りないことで、日本の製造業が輸出できなくなるような状況が無いようにする」と、産業界への再生可能エネルギーの供給拡大に取り組む方針を示した。その一環として、これまで電力小売事業者に限っていた再エネ電力の購入を証明する「非化石証書」の取引を「90倍ほどにパイを増やし、メーカーも売り買いできるようにする」とした。合わせて「(証書の)価格を10分の1程度にする」ことを検討する。梶山経産相は「できれば来年度から取り組む」とし、グリーン化に向けて日本の産業構造の転換を後押しする姿勢を示した。
世界中で脱炭素化の流れが加速する中で、今後のものづくりには原材料の確保や生産、廃棄などあらゆる段階で温室効果ガスを削減することが求められている。海外メーカーがサプライヤーの調達条件に再エネ導入を課したケースもあり、グリーン電力が調達できなければ「国内生産品が海外市場で受け入られない場合が出てくる」という危機感がある。自動車産業も例外なく、将来的に温室効果ガスの実質ゼロ化が求められる。
こうした中、経産省は産業界の再エネを購入を証明しやすくして、日本企業の国際競争力を高めていく。
梶山経産相はグリーン電力の導入拡大によって、将来的にも「国内製造業を残していきたい」との思いを述べた。次代に対応したグリーンでカーボンニュートラルな製造基盤を構築できれば「多様な雇用を守る」ことと、日本のものづくり力の底上げが期待できると考える。
その一方で、再エネは電力コストが「まだ高い」という実情がある。発電コストが諸外国に比べ割高だと、原価が高まり国内品の競争力を失いかねない。梶山経産相はこれらの課題についても「どう安くしていくか検討を進める」とし、経産省として対策を加速させる計画だ。
※日刊自動車新聞2021年(令和3年)5月12日号より