経済産業省は4日、国内半導体産業の競争力強化に向けて「半導体・デジタル産業戦略」を策定した。先端半導体の国内生産体制の構築を進めると同時に、自動運転車や電動車の商品力強化に欠かせない半導体の開発力を高める方針を打ち出した。梶山弘志経済産業相が同日公表した。梶山経産相は半導体とデジタル産業が「国民生活に不可欠な基盤」とした上で「これまでの民間事業支援の枠を超え、国家事業として取り組む」と述べ、海外勢に追い抜かれた同分野へのてこ入れに意欲を示した。
新戦略のうち、情報処理に欠かせない「先端ロジック半導体」については、国内に海外大手との合弁生産拠点を設け、高度な半導体の安定供給を目指す。合弁事業を通じてノウハウを蓄積し、次世代製造技術の国産化にも役立てる。メモリーやセンサーを手がける国内既存工場は再編、統合を視野に入れて機能強化を図る。
さらに、さまざまな分野のデータセンターが集積する〝データセンターパーク〟を全国5カ所以上に設ける考えを示した。年内にも立地計画を策定する方針だ。次世代車では交通安全や環境対応を向上するため、通信(コネクテッド)による情報連携が必要とされている。国内のデータセンターで情報を管理する体制を整えて、データの信頼性とセキュリティーを担保し、自動運転車などの安全な運行につなげる。
政府は、すでに2兆円規模の「グリーンイノベーション基金」を創設し、先端半導体の開発支援に乗り出した。しかし、諸外国では日本よりも多額の資金を投じて半導体産業の強化を進めている。政府はこれらに匹敵する政策を打ち出していく方針で、今後の予算編成で重要ポイントになりそうだ。
※日刊自動車新聞2021年(令和3年)6月5日号より