スズキは、トヨタ自動車と同じく織機製造事業をルーツとする自動車メーカーです。軽自動車メーカーの印象が強い会社ですが、近年は登録車(660cc超)にも注力しており、20年度の国内新車販売台数(登録、軽の合計)でホンダを抜き2位になりました。実はインドを中心に海外でも多数、車両を販売しており、四輪車の世界販売台数では10位前後に位置します。
日本を含む世界の新車市場は停滞局面に入り、一部に従来の拡大路線を方向転換する自動車メーカーがみられます。しかし、スズキは今後の大きな成長を見込みます。今年2月に発表した中期経営計画では、25年度に世界新車販売台数を19年度比3割増の370万台に引き上げる方針を打ち出しました。
成長の核となるのが、同社の主力地域のインドです。同社は国別の販売計画を公表していませんが、インドを中心とするアジア圏を25年度に250万台に増やし、将来的にはインドだけで500万台を視野に入れます。これまでターゲットにしていた都市部の顧客に加えて、農村部の需要を掘り起こし、大きく販売を伸ばす考えです。
成長基調にある同社ですが、直面する経営課題が散見されます。主力のインドでコロナ禍の影響が長引いていることに加え、価格や利便性を理由にこれまで同社が開発に消極的だった電気自動車(EV)の導入機運がこのところ一気に高まってきたためです。このため18年度以降、毎年1500億円前後だった研究開発費を、今後の5年は年間平均2千億円に増額し、中期計画の期間中にEV技術を確立する計画です。
さらに約40年間にわたりスズキの陣頭指揮を執り、インド市場開拓や軽市場の確立で功績を上げたカリスマ経営者、鈴木修会長が6月25日の株主総会で退任することが決まりました。厳しい経営課題をいかに乗り越え、高い成長目標を実現するのか、鈴木俊宏社長の手腕に注目が集まっています。
※日刊自動車新聞2021年(令和3年)6月16日号より