経済産業省は半導体産業の基盤強化に向けて、国立の高等教育機関などと連携し人材育成の強化に乗り出す。台湾積体電路製造(TSMC)が工場を新設する熊本県を24日視察した萩生田光一経産相は、「九州地区の大学や高等専門学校、熊本県、九州経済産業局が連携し、基礎から実用まで一貫したカリキュラム開発を検討する」との構想を表明。日本が巻き返しを狙う先端半導体の生産や研究開発で即戦力となる技術者の育成を目指す。萩生田経産相は全国の高専などにも半導体カリキュラムの導入が可能と見ており、若手の拡充を進め半導体産業の再興を後押しする考えだ。
TSMCが進出する熊本県には国立の高等教育機関として、熊本大学と熊本高専がある。このうち、熊本大は来年度にも半導体の研究センターを学内に設置する構想があるという。萩生田経産相は「熊本高専で学んだ専門的知識を持つ人が、熊本大に編入して学びを続けられる」など、半導体関連教育のステップアップに向けた姿を描く。また、九州全体では国立大学が10校、高専が8校あり「高等教育機関の集積は技術者育成でも大きな利点」とも指摘。こうした地の利を生かして高度な専門スキルを持つ人材を育て、半導体を通じた地方活性化につなげていきたいとの思いもにじむ。
同分野における人材育成の取り組みの全国展開も目指す。萩生田経産相は「国立の高専は全国に51校あるが、一つの独立行政法人で運営している」とし、全国規模で「スケールメリットを生かしたカリキュラムの構築も可能」とみている。実現すれば「新時代の高専の先導的事例にもなり得る」との期待感も示した。
萩生田経産相は同日、TSMCの劉徳音会長とオンラインで会談。この中で「日本で生産基盤を確立し、さらなる投資の検討を含め、日本の産業界やアカデミアと連携を深めていく意思を確認した」という。
半導体関連の新たな担い手が増えることは、自動車産業にも大きなメリットになり得る。日本が後れを取る先端半導体は、グリーン化やデジタル化が必須となる次世代車づくりに欠かせない。また、先端品以外でも半導体調達網の混乱が完成車生産に与えるリスクが顕在化した。半導体産業を支える層が厚くなれば、自動車関連が抱える課題の解決も図りやすくなりそうだ。