自動車のセンシング能力を拡充するため、次世代センサーの開発と実用化が本格化する。ホンダは2022年に中国市場向けモデルから搭載する予定の車両全方位を検知するセンサーの一種として採用する中距離ミリ波レーダーに、検知範囲を拡大できるFCM方式を初めて採用する。日産自動車は量産車に装備できる低コストの次世代3Dライダー(レーザースキャナー)を早期に開発し、30年度までにほぼすべての新型車に搭載する。ソニーは車載ライダー向けに小型・高性能でコストを抑えた距離センサーを22年にサンプル出荷する予定で、次世代の車載センサーとしてライダーの普及を後押しする。
ホンダは車両周囲のセンシングを全方位に拡大して予測判断能力を向上する先進運転支援システム(ADAS)「ホンダセンシング360」を22年から展開する。交差点での出合い頭の衝突回避・被害軽減や車線変更でのステアリング操作を支援する技術を実用化する方針で、30年までに先進国の四輪車すべてに装備する計画。センシング360は車両全方位を認識するためのセンサーにフロントセンサーカメラと中距離と長距離のミリ波レーダーを使用する。この中距離ミリ波レーダーに初めてFCM方式のものを実用化する。
車載ミリ波レーダーは現在、周波数を変調した連続波を送信し、送信波と反射波との周波数差から物体位置を検知するFMCW方式が主流だ。FCM方式は周波数の変調速度を高速化、素子数も増やすことで、距離分解能や対象物の速度の検知範囲を広げることが可能となる。
高性能なセンサーを実用化することで車両周辺の検知性能を強化し、事故防止に役立つ機能を拡充する。
また、日産はADAS「プロパイロット」シリーズに、車両周辺を検知するためのセンサーとしてカメラとミリ波レーダーを活用している。次世代プロパイロットは安全機能を高度化するため、対象物の距離に加え、形状も検知できる3Dライダーを搭載していく方針。サプライヤーと小型で低コスト、検知能力の高い次世代ライダーを開発しており、30年度までにはほぼすべての新型車に高性能な次世代3Dライダーを搭載する計画だ。
さらに、ソニーは自動車向けの次世代センサーとしてライダーの普及を想定し、グループのソニーセミコンダクタソリューションズがライダー向け距離センサーを開発した。小型ながら微細な画素と測距処理回路を1チップ化したセンサーで、小型で高精度、高速に測距するライダーを実現する。22年3月にサンプル出荷する予定で、ライダーの普及を促進していく。
ADASの普及に伴って、車両周辺を検知する「目」となるカメラやレーダーなどのセンサー類の搭載数は増えている。今後、先進的な安全技術を高度化して、自動車の安全性を向上するため、センシング能力を向上した次世代センサーを開発して、順次切り替えていく。
※日刊自動車新聞2021年(令和3年)12月10日号より