ミディアムクラス・ミニバンの新型車が相次いで国内市場に投入され、市場の活性化が期待されている。8年ぶりに全面改良したトヨタ自動車の「ノア」「ヴォクシー」は、新開発ハイブリッドシステムによる低燃費化や、高機能化した先進運転支援システム(ADAS)などを採用して商品力を向上を図った。ホンダは今春に市場投入する予定の新型「ステップワゴン」を、ライバルであるノア、ヴォクシーの市場投入前にホームページで先行公開、早くも競争の火花を散らしている。ミドル級ミニバン市場は安定して推移しており、日産自動車の「セレナ」を含め三つ巴による覇権争いが熱気を帯びてきた。
多人数が乗車できる広い室内空間を持つミニバンは、短いボンネットのセミキャブワゴンの登場で市場が拡大、これを狙って2000年頃まで乗用車メーカー各社が複数のモデルを展開していた。ここ数年はSUVに人気が移り市場が縮小、マツダがミニバンから撤退し、ホンダが「オデッセイ」の販売を終了するなど、各社ともミニバンのラインアップを縮小してきた。ただ、ミニバンはファミリー層を中心に一定の需要があり、ほぼ5ナンバーサイズのノア、ヴォクシーや日産のセレナ、ホンダのステップワゴンは販売台数も拮抗しており、激しいシェア争いを展開してきた。
ノアとヴォクシーの新型車は、トヨタからバン事業を移管されたトヨタ車体が開発した初のモデルだけに、トヨタ車体の水澗英紀開発本部長は「社運をかけて開発に取り組んだ」と力を込める。上級ブランドであるレクサス車に採用している先進運転支援技術を採用したほか、効率化を追求した新開発ハイブリッドシステムを搭載するなど、トヨタ車として初の技術を搭載して商品力の向上を図った。
ホンダは今春に市場投入する予定の新型ステップワゴンのデザインを先行公開した。ノア、ヴォクシーより市場投入時期が遅れることから、購入を検討しているユーザーをつなぎ止めるためだ。
新型車の最大の特徴は、初代モデルに原点回帰したエクステリアデザインで、押し出し感の強いフロントグリルを採用したノアとヴォクシーとは対照的。関東地区のホンダ系ディーラーのトップは「新型車のデザインは評判が良い。5月の発売に向けて受注開始は当初3月から開始する予定だったが、2月に前倒しになった」としており、競合するノア、ヴォクシーを強く意識する。
また、日産のセレナは、シリーズ・ハイブリッドシステム「eパワー」や運転支援システム「プロパイロット」をアピールして対抗する。ただ、ライバルがフルモデルチェンジする中でモデルサイクルがまもなく6年を迎えるだけに厳しい戦いが予想される。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)1月14日号より