上場している国内の自動車メーカーが通期業績見通しの修正を迫られそうだ。自動車メーカー各社は半導体をはじめとする部品の調達難が昨年12月ごろから回復し、これまで減産してきた分を取り戻す挽回生産を計画していたケースもあるが、想定よりも回復ペースは鈍く、生産・販売の水準は依然として低調だ。原材料価格や物流コストの上昇が収益を圧迫している。31日の三菱自動車と日野自動車を皮切りに発表される2021年4~12月期業績発表が注目される。
21年4~9月期の自動車メーカー各社の業績は、前期にコロナ禍の影響で新車市場が落ち込んだ反動もあって、全社が増収増益となった。トヨタ自動車の売上高、営業利益が過去最高を更新するなど、一部は好業績となったものの、世界的な半導体不足などによって生産・販売台数レベルは低調で、コロナ禍前の水準に回復していない。
半導体の供給体制は改善しており、サプライチェーン混乱による部品不足の問題も解消に向かっていたことから、多くの自動車メーカーが先行き不透明ながら10~12月期以降、生産・販売レベルは回復するとみていた。しかし、車載半導体の調達は依然として不透明で、1、2月も稼働停止や減産などによる生産計画の見直しが相次いでいる。
21年4~9月期業績発表時に通期のグローバル販売計画(小売りベース)を公表した自動車メーカー8社のうち、7社が前回予想を下方修正した。相次ぐ生産調整によって、今後、通期の販売計画の修正が相次ぐ可能性がある。すでにトヨタは約900万台としていた生産計画を下回る見通しを発表している。下期の生産台数は過去最高レベルを計画していたものの、半導体が想定通り供給されていないことなどから、計画通りのペースで生産できていない。1月に挽回生産する予定だったホンダも国内の一部工場で生産計画に達していない。
収益面でも原材料価格の高騰や物流コストが想定を上回る水準で推移しているもようだ。自動車用触媒に使用する貴金属類など、一時に比べて下落している材料もあるが、アルミニウムや銅、半導体、電池部材などは高水準で推移している。原油高やサプライチェーンの混乱で高騰する物流コストは「ならすと平時の3倍程度、スポットだと10倍近い」(自動車メーカー首脳)水準で、各社の収益を圧迫する。
一方、為替水準は円安で推移している。トヨタは今期、1㌦=110円を想定しているが、26日正午時点の円相場は1㌦=約114円。トヨタの場合、1円円安に振れることで400億円程度の増益要因となる。
今期の自動車メーカー各社の業績は、販売奨励金の抑制や固定費削減などで、全体的に堅調に推移してきた。半導体不足などによる生産・販売へのマイナス影響や、原材料価格上昇の影響をカバーできるのか、注目される。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)1月27日号より