国土交通省の秡川直也自動車局長は日刊自動車新聞などの取材に応じ、岸田文雄首相が自動車整備士と行った「車座対話」について「整備業に脚光が当たり、大変良い機会になった」と総括した。整備士からは人手不足などの現場の悩みが訴えられたほか、更衣室の整備など女性職員への配慮を求める意見もあり「岸田首相もかなり反応していた」という。車座対話を終えた岸田首相は自動車の安全や安心を支える整備士の処遇改善に取り組む考えを明らかにしており、自動車局としても「今までやってきたことを含め、しっかり対応していく」と決意を新たにしていた。
今回の車座対話は都内で13日、整備士3人のほか、整備学校や整備会社の代表者も出席して行われた。電動化や先進安全装備の高度化が進む中で、新技術への対応などで整備士に負荷がかかっている現状がある。整備士からは「日々やりがいはあるものの、もう少し人材が入ってくれれば」との切実な声が上がったという。
これらの課題解決に向け、秡川局長は「整備業をもっと分かるような宣伝を若い人に向けてやっていきたい」とした。さらに仕事の質が変わる中でも、デジタル技術を積極的に取り入れ「負荷をなるべく軽くするようにしていきたい」との道筋を示していた。
また、「今後の自動車事故対策勘定のあり方に関する検討会」の中間とりまとめで、自動車損害賠償責任保険(自賠責)の賦課金制度を拡充し、被害者支援や事故防止の対策事業に活用する案が示された。これについて、自動車安全特別会計から一般会計に貸し出している約6千億円の「繰り戻しが大前提」としつつ、「被害者から支援拡大のニーズが高まっている」とし、事業の安定推進のための賦課金拡充にも一定の理解を示した。しかし、「なるべく負担を低く抑えたい」としており、引き上げ幅を上限150円の範囲で今後も議論を続け、適正な水準を導き出していく計画だ。
新型コロナウイルスの感染が再拡大していることを受け、1月はタクシーなど旅客事業者の業績に打撃が広がっている。こうした事業者を支えるため、金融支援などの支援策について「引き続き積極的に情報提供を行っていく」方針だ。一方、感染状況が落ち着いていた昨年11、12月頃は「コロナ前の9割まで(利用者が)戻ってきたところもあった」という。コロナ禍が続く中でも、状況次第で利用者の回帰につながる「一つの実証になった」ともみており、これらの知見も参考にしつつ、資金繰り対策だけでなく、本業の回復につながる支えもしていきたい考えだ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)1月31日号より