電気自動車(EV)市場での存在感確立に向けた競争が2022年下期に本格化する。年央から新型EVの投入ラッシュとなる予定で、日本メーカーではトヨタ自動車「bZ4X」やスバル「ソルテラ」が発売を控えるほか、輸入車勢でもメルセデス・ベンツ日本(MBJ、上野金太郎社長、東京都品川区)が「EQ」シリーズ3車種を年央から順次展開すると表明。フォルクスワーゲングループジャパン(VGJ、マティアス・シェーパース社長、愛知県豊橋市)も、アウディ「Q4e―tron(イートロン)」の価格を600万円以内に設定して今秋導入すると予告した。半導体不足などで低迷する新車生産量の回復と新型車投入が重なれば来店誘致の契機となり、EVにとどまらない新車市場浮揚の起爆剤となりそうだ。
国内外各ブランドの22年の商品投入見通しが出揃いはじめ、年央から後半にかけて新型EVの投入が明らかになりつつある。bZ4X/ソルテラは21年の発表以来、22年央の投入に照準を定めてきた。EQシリーズやイートロンシリーズでEV市場を先行する輸入車勢も、年央以降を目処に商品投入を加速させる。国内の現行EVでは例のないコンバーチブルモデルを設定するフィアット「500e」も、「当初は21年中に導入する予定だったが、半導体影響などを考慮して22年半ばに投入する」(FCAジャパンのポンタス・ヘグストロム社長)計画だ。
これに先駆けて、日産自動車「アリア」や、日産と三菱自動車が共同開発・生産する新型軽EVも今春に登場する。とりわけアリアとbZ4X/ソルテラ、Q4イートロンはスペックが似通い、価格面での競合も想定されることから、販売現場でも「台数は決して多くないが、売り負けないようにしたい」(近畿のトヨタ系ディーラー幹部)と競争姿勢は鮮明になっている。比較のための来店が増加すれば、商談の活発化や他車種の露出など、販売現場の盛り上げにもつながると期待される。
一方で、今後懸念されるのが新車供給体制の先行きだ。足元でもメーカーの生産調整が相次ぎ、販売現場でも新車供給への影響について「少なくとも年の前半は続くのでは」(都内の輸入車系ディーラー社長)と受け止める声が上がるなど、予断を許さない状況が続く。EVは内燃機関車に比べて市場規模がまだ小さいこともあり、影響は軽微と見られるものの、さらなる不確定要素が重なれば登場を控える車種の出足も左右されそうだ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)1月31日号より