中小企業庁がまとめた「2022年版中小企業白書」によると、中小企業の製造事業者の約6割が、新型コロナウイルス感染拡大によるサプライチェーン(供給網)への影響があると回答した。生産活動や部材調達などの面で支障が出ている。加えて足元では、ウクライナ情勢の影響で原材料価格やエネルギー価格の高騰が続いており、事業環境の悪化を危惧する声も多い。再生可能エネルギーの導入など脱炭素化に向けた取り組みも求められており、自動車関連を含めて中小企業には中長期的視点に立った舵取りが必要になる。 白書では、中小製造業の58.8%がコロナの影響が供給網に波及しているとした。影響が最も出ている業務としては、「営業・受注」を挙げた事業者が8割近くに上った。移動制限などで営業機会が損失したことなどが要因と考えられる。
加えて「海外からの部材の調達」(19.1%)や「物流・配送」(12.9%)など、供給に関連する業務にも支障が出たとの回答も一定数あった。自動車業界でも、ロックダウン(都市封鎖)で完成車や部品の生産活動の停止を余儀なくされたケースも少なくなかった。3月末からは中国・上海市でロックダウンが行われており、該当地域周辺の供給網の維持や代替調達が課題になっている。
ロシアのウクライナ侵攻が中小企業の経営に影を落としている。特に原油高は深刻で、1月24日以降、市場価格は1㍑当たり170~175円台で高止まりしている。政府は石油元売りに支給しているガソリン補助金の上限額を、4月28日から1㍑当たり25円から35円に引き上げ価格抑制に動いているが、効果は限定的だ。白書でも、今後の不安要素として、「原材料価格、燃料コストの高騰」を挙げた事業者が7割近くとなった。生産活動や輸送にかかるコスト負担が中小企業の経営を圧迫しており、今後「販売価格の引き下げやコストダウン」に注力していくと回答した企業が、20年度の1.5倍近い約4割に上った。
中長期的には、カーボンニュートラル達成に向けた取り組みも必要になる。脱炭素化への施策として「太陽光発電設備の設置」や「電気自動車の利用など電化の促進」を始めた事業者が約3割ほどだった。再エネ導入は、資金調達などで有利に働くことに加え、光熱費や燃料費の抑制にもつながるため、足元の原油高を受けて投資が更に活発になりそうだ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)5月2日号より