国土交通省は、国土交通行政に関する技術政策の基本指針「第5期国土交通省技術基本計画」を策定した。計画期間は2022年度から26年度までの5年間で、自動車関連では自動運転「レベル4」の地域限定型無人自動運転移動サービスの普及に向けた新たな実証実験などを実施する。ETC2.0などのビッグデータと道路データを利活用した自動運転車との路車間協調システムの開発も促進する。脱炭素やデジタルトランスフォーメーション(DX)など新たな目標の実現も視野に入れた技術研究開発を進める上で、省庁の垣根を越えて産学官が連携した取り組みが一層求められる。
同計画では経済産業省と連携し、遠隔監視のみで行うレベル4無人自動運転移動サービスの対象エリア・車両を拡大するなどの次期プロジェクトを展開する。高速道路でのレベル4自動運転トラックの実現・普及に向けた技術研究開発と実証実験も進める。自動運転車使用時の安全を確保するため、自動運転技術などに対する車載式故障診断装置(OBD)を活用した検査手法の検討も行う。
また、自動運転に対応した走行環境整備に向けた取り組みでは、自動運転に必要な区画線の要件案や先読み情報提供システム仕様案の作成に向け、官民連携の共同研究を進める。ETC2.0や民間企業などが保有するビッグデータを活用した渋滞分析技術や、ETC2.0システムによる情報収集・提供機能の高度化を図る。道路システムのDXを推進するための道路データの利活用高度化に関する研究も行う。
さらに、交通事故の削減を目指して、自動運転の高度化に向けた先進安全自動車(ASV)プロジェクトを推進する。現在の事故自動緊急通報装置は、エアバッグ展開を起点に自車の乗員の傷害確率から通報装置が起動するが、日本の交通事故死者数で最も多くを占める歩行者などの交通弱者の傷害を予測できない。そうしたことから、事故自動緊急通報装置の高度化を検討する。
運輸部門における二酸化炭素(CO2)排出量削減の取り組みも加速する。水素・燃料電池などのさらなる利活用の拡大と利便性の向上を目指し、水素タンクなどの基準化・標準化を図り、自動車以外の多様な輸送機材への導入を促進する。
同計画は、03年度以降4期にわたって策定してきた。第5期の策定に当たっては、社会資本整備審議会・交通政策審議会技術部会で審議を行った。20~30年先に実現を目指す将来の日本社会を想定し、今後5年間で戦略的・重点的に取り組むべき6項目の具体的な技術政策を取りまとめた。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)5月10日号より