トヨタ自動車と日産自動車、スバルが新型電気自動車(EV)の販売、受注を12日に開始する。日本自動車販売協会連合会(自販連)などがまとめた4月の乗用EV(軽自動車含む)の販売台数は前年同月に比べて約2.5倍と、乗用車全体が2桁減となる中で大幅増となった。乗用車市場に占めるEV比率は依然1%に満たないが、今後は軽乗用も含めてラインアップが拡充することで、欧州や中国に比べ遅れていた市場の拡大が期待される。一方で、車両価格や充電設備など普及に向けた課題も多く、さらなる性能向上やインフラ整備も求められる。
自販連と全国軽自動車協会連合会が10日に発表した統計によると、4月のEV販売台数(乗用車)は前年同月比152.4%増の1764台だった。乗用車販売に占めるEVの比率は前年同月よりも0.5㌽多い0.7%に増加。登録車に限定すればEV比率は同0.6㌽増の1.0%となった。
12日には3社の新型EVが出そろう。トヨタの「bZ4X」とスバルの「ソルテラ」は共同開発車で、日産の「アリア」はベースグレード「B6」(2WD)だ。
日産と三菱自動車は共同開発した新型軽EVの発売を予定しているほか、既存車では日産が「リーフ」を今夏に最大20万円弱値下げするなど、今後はラインアップや商品力の面でEVの普及に向けた環境が整う。
しかし、すでにEVの比率が1割を超えている中国や欧州と比べると普及ペースは鈍い。政策主導でEVシフトを推進する中国や欧州と比べ、日本はハイブリッド車(HV)の市場が確立されていることや、再生可能エネルギーの普及率が低いためにEV導入による環境負荷軽減効果が薄いことなどが背景にある。
新型EVの投入で一定の市場拡大は見込めるが、ソルテラの月販計画は150台、bZ4Xは2022年度内の販売計画が5千台と少ない。電池のコストなどで車両価格が高く、多くのユーザーにとってはガソリン車やHVと同列に並ぶ選択肢にはならないのが現状だ。
車両とインフラの両方で課題が残るEVだが、将来的にカーボンニュートラルを実現するためには、HVの普及や進化と同時に国内向けのEVにも本気で取り組む必要がある。自動車メーカーは車の競争力向上とラインアップ拡大を進めながら、販売手法を模索し、カーボンニュートラルの実現を目指す。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)5月11日号より