日刊自動車新聞社

モビナビ学生 モビナビ転職

新規会員登録は現在受付を休止しております

企業の採用ご担当者の方は「モビナビの求人掲載」

メニュー

自動車業界トピックス

FCVの高圧水素タンク、「道路運送車両法」に規制一元化

検査合理化で販売に追い風

高圧ガス保安法の一部改正案が衆議院で可決したことを受け、2法令にまたがる燃料電池車(FCV)の高圧水素容器(水素タンクと付属品)に対する規制を一元化することが決定した。同法の適用を除外し、規制法令を道路運送車両法に一本化する。現行制度では各々で受ける必要がある水素タンクの再検査と車検が、2023年にも一括して行えるようになる。政府は自動車関連事業者とユーザーの利便性向上を図るとともに、50年カーボンニュートラル実現に向けてFCVの普及促進につなげたい考えだ。

トヨタ自動車「ミライ」の燃料電池ユニット

現行制度で、FCVなど高圧ガスを燃料とする車両は、道路運送車両法(所管は国土交通省)と高圧ガス保安法(所管は経済産業省)の規制が適用されている。これに対して自動車業界などからは、かねてから規制合理化の要望がなされ、検討が進められてきた。

主な課題として、事業者は高圧ガス保安法と道路運送車両法双方で登録審査手続きや不具合対応が必要で、ユーザーは高圧ガス保安法上の「容器再検査」と道路運送車両法上の車検を各々で受ける必要があることが指摘されていた。

車両の初回車検は新規登録日から3年(以降は2年)で、水素タンクなど容器再検査は初回が製造日から4年1カ月以内(以降は2年3カ月以内)とそれぞれ定められた実施間隔が異なっている。そのため、万が一、ユーザーが容器再検査を失念した場合、水素ステーションで水素の充てんを拒絶される事例なども生じていた。

政府は、こうした事業者と利用者の手間や負担がFCVの普及の遅れにつながっていると分析。学識者や自動車業界関係者らで構成する検討会を設置し、FCVや水素ステーションなどの規制のあり方について議論を重ねてきた。

規制の一元化については、安全を確保しながらも、より合理的な制度を目指すことが必要と判断。ユーザーの利便性や企業の産業競争力の向上とFCVの普及拡大を目指して、高圧ガス保安法の適用除外を含む同法の一部改正案は、11日に衆議院で賛成多数で可決された。

次世代自動車振興センターによると、FCVの国内保有台数は21年3月末時点で5170台。販売されているFCVの車種と水素ステーションの設置数が少ないことなどもあり、政府が掲げる20年度「4万台」の目標とは大きく乖離している。そうしたことからも、政府は車両の購入補助政策を拡充して最大補助額を上乗せするなど普及促進に力を入れている。

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)5月16日号より