経済産業省は、バイオテクノロジーを活用した化学品の社会実装への支援を加速する。2025年以降の実証を視野に、バイオマス資源を原料とするものづくり技術の確立などを目指す。常温で生成できるバイオ技術を用いた製造プロセスは、従来の化石燃料使用時と比べて二酸化炭素(CO2)の排出量を大幅に削減できる。タイヤやシート、内装部品などの自動車領域を含む最終製品に適用することも視野に、政府として開発を後押しする。
バイオ技術を活用したバイオ関連の世界市場は、2030年に約200兆円に成長することが見込まれ、そのうち約4割を工業分野が占めると予測されている。自動車産業では、バイオ燃料のほか、タイヤやシートなどの素材・繊維領域、内装部品で使われる高機能プラスチックなどでの活用も期待されている。
バイオテクノロジーの大きな利点の一つは、製造時のCO2排出量を抑制できることだ。石油などを用いた従来の化学プロセスによる製造では、クラッキング時に800~900度の高温が必要なため、CO2を大量に排出する。一方、バイオプロセスによる製造では、4~60度の自然条件下でものづくりが可能なため、脱炭素化に貢献できるという。
政府としても2兆円の「グリーンイノベーション(GI)基金」を使い、技術開発を支援する。CO2を原料に物質生産できる微生物の開発・改良と製造技術の確立事業などに補助金を支援し、50年にCO2排出削減量を燃料分野で約9億3千万㌧、素材分野では11億㌧を目指す。25年以降に随時実証をはじめ、40年以降の社会実装を目指す。50年には世界で年間123兆円規模の経済効果を見据える。補助金などの具体的な予算額は、今後有識者を交えた審議会で詰める。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)6月7日号より