経済産業省は、研究開発(R&D)を伴うスタートアップ企業の支援を強化する。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じた、企業への専門家の派遣や助成金の拡充などを視野に入れる。自動車産業でも自動運転ソフトウエアや「空飛ぶクルマ」など先進領域を中心にR&D型スタートアップ企業の立ち上げが増えている。官民一体でグローバルに台頭できるユニコーン企業の創出を目指す。
企業価値が10億㌦以上の非上場企業であるユニコーン企業の創出においては、米国が突出している。経産省によると2021年12月の時点で488社あり、2位以下の中国(170社)、欧州(116社)を大きく引き離している。自動車関連では、アルファベット傘下で自動運転車の開発を手がけるウェイモ、同じく自動運転技術を開発しており昨年トヨタ自動車グループから出資を受けたニューロなどが代表的だ。
一方、日本のユニコーン企業数は11社と、先進国の中でも低水準になっている。人材不足や起業風土が成熟していないことが主な理由だが、最大のネックは資金調達だ。特に設備投資を伴うR&D型スタートアップ企業は膨大な初期投資がかかり、調達額は圧倒的に不足している。政府による15~19年度の補助金件数も、米国が7125件だったのに対して日本は638件だった。
スタートアップ企業の経営状況は厳しいが、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に代表される先進技術の領域などでは、開発や意思決定スピードが速いスタートアップ企業の優位性が高まっており、「成長のドライバーで将来の雇用、所得、財政を支える新たな担い手」(経産省)として期待されている。
このような背景もあり、政府としてもスタートアップ企業の支援に乗り出す。NEDOの役割を拡大し、企業側に不足している専門家の派遣や助成金の増額、ベンチャー企業と外部のマネジメント人材のマッチングなどを視野に入れる。具体策は今後有識者を交えて検討する。
岸田文雄首相は22年を「スタートアップ創出元年」と位置付け、骨太の方針にも支援策を盛り込んだ。行政支援を拡大し「国内で閉じた企業ではなく、世界で戦えるユニコーン企業を創出する」(経産省担当者)考えだ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)6月16日号より