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自動車業界トピックス

国内自動車メーカー、原材料高騰で価格転嫁の動き

アウトランダーPHEV

国内自動車メーカーで、原材料高騰を新車価格に転嫁する動きが表れ始めた。マツダと三菱自動車は今秋に一部車種で値上げを実施する。一部仕様の変更によるもので、価格転嫁分はいずれも約3%とみられる。イヤーモデル制を取らない日本では、これまで国内メーカーは大幅な改良を伴わない形での車両価格改定には慎重な姿勢を崩していなかった。原材料高騰が自助努力で吸収できないレベルに達する中、今後は他メーカーにも価格改定に踏み切る動きが広がる可能性がある。

マツダは「マツダ3」と「CX―30」の価格を現行モデルに対し6万6千円引き上げる。装備を追加するとともに原材料高騰分を織り込んだもので、「サプライヤーに過度な負担をかけないようにする」(マツダ幹部)ために価格転嫁を判断した。

マツダ3

三菱自もプラグインハイブリッド車(PHV)の「アウトランダーPHEV」の2モデルを値上げする。このうち上級グレードでは装備追加により車両価格を15万円引き上げるが、「装備の追加はごく一部にとどまる」(三菱自関係者)と実質的に原材料高騰に伴う値上げとみられる。三菱自は他のモデルでも価格改定を検討しているという。

輸入車はすでに原材料高騰を理由に価格改定を実施している。フォルクスワーゲングループジャパン(マティアス・シェーパース社長、愛知県豊橋市)はフォルクスワーゲンとアウディの両ブランドで4月1日に車両価格を改定した。

ステランティスジャパン(ポンタス・ヘグストロム社長、東京都港区)はプジョーとシトロエン、DSオートモービルの3ブランドで原材料高や原油価格高騰による輸送費の上昇、円安などの影響から7月1日に値上げする。同じ傘下のジープでは主力車種「ラングラー」で直近1年間に3回値上げを実施した。

年次改良のタイミングで車両価格を引き上げるイヤーモデル制を取っていない日本市場では、原材料価格などの高騰分を適時、車両価格に反映する商習慣が根付いておらず、これまで国内メーカーは価格転嫁には慎重だった。マツダや三菱自の判断は、原材料価格の高騰が自助努力では吸収しきれないレベルにまで達していることを示しており、今後は価格転嫁の動きが他メーカーにも広がる可能性がある。

トヨタ自動車は5月の決算説明会で「今回の資材インフレに伴い、少しお金をちょうだいしてもいい層のお客さまもいる。一方で日常の足として使っているお客さまもたくさんいる」(長田准執行役員)と価格転嫁への考え方を示した。今後、価格改定を検討する場合は、一律の値上げではなく、高額車など原材料高騰に伴う価格転嫁が受け入れられやすい価格帯の車種から実施するとみられる。

現在は半導体不足や部品供給難による生産制約の影響もあり、新車の長納期化が続いている。この中で大幅な改良を伴わない一部仕様の変更による価格改定をユーザーに納得してもらうことは難しさも伴う。ただ、自動車にとどまらず産業界全体で価格転嫁自体を容認する流れもあり、各社はマツダや三菱自の動きを踏まえ、価格改定のタイミングや車種の検討を続けることになりそうだ。

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)6月21日号より