萩生田光一経済産業相は5日の閣議後会見で、ロシアのプーチン大統領が日本企業も参画する石油・天然ガス開発事業「サハリン2」をロシアの支配下に置く大統領令に署名したことを受け、「事業者と精査し、直ちに対応策を考えていく」との意向を示した。すでに外交ルートでロシア側に説明を求めており、情報を収集した上で対応策を練っていく。日本は液化天然ガス(LNG)の輸入の約1割をロシアに依存しており、サハリン2から調達したLNGの大半は火力発電で使われる。政府の節電要請を受けて自動車産業も自家発電設備の活用といった対応を進めているが、万が一LNGの供給が滞れば足元の電力不足に拍車がかかる恐れがある。
サハリン2は、極東ロシアで行われているLNG開発事業で、サハリン・エナジー・インベストメントが運営している。サハリン・エナジーは、三井物産や三菱商事といった日本企業も株主になっており、日本が輸入するLNGの約1割がサハリン2で生産されている。プーチン大統領は、サハリン2の事業主体を、新たに設立するロシア企業に譲渡するよう命じる大統領令に署名した。ロシアに経済制裁を続ける日本への対抗処置とみられる。
サハリン・エナジーの現在の株主である日本企業に対し、1カ月以内に株式取得に合意するかを回答するよう迫っている。譲渡が実現すれば、LNG供給が滞る可能性が高く、ロシアから輸入したLNGの多くを火力発電で使用している日本は、深刻な電力不足に陥る恐れがある。
萩生田経産相は「ただちに(ロシアからの)輸入が止まるわけではない」と説明したものの、「大統領令によって(企業に)求められるものを事業者と精査し、ただちに対応策を考えたい」と官民一体で取り組む姿勢を示した。すでに外交ルートでロシア側に接触を図っており、対応策の具体化を進めていく。
日本政府は電力需給のひっ迫を受け、7~9月の3カ月間に全国規模の節電要請を発令している。自動車産業も、自家発電設備の活用や電力需要の少ない夜間操業の検討など節電対策を進めている。政府としても火力発電の再稼働を急ぐなど対応を進めているが、万が一ロシアからのLNGの供給が停止する事態になれば、自動車や部品の生産、販売に支障が出ることは避けられない。今後1カ月の動向が注視される。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)7月6日号より