政府が脱炭素社会を実現するための施策を議論する「GX実行会議」の初会合を開いた。今後10年で官民合わせて約150兆円の投資が必要になるとし、20兆円規模の「GX経済移行債(仮称)」の発行などを目指す。財源には炭素税を含むカーボンプライシング(CP)も候補に挙がっており、産業界も対応を迫られることになる。電気自動車(EV)の電池製造やインフラ整備、クリーンエネルギー自動車(CEV)への切り替えなどで年間数兆円規模の投資が必要になる自動車産業にとっても重要な施策になりそうだ。
GX実行会議は、今後10年のロードマップ(工程表)を作成する。足元のウクライナ情勢を踏まえ、エネルギーの安定供給を確保することを前提にしつつ、脱炭素化の道筋をつけたい考えだ。
同会議で焦点になるのは、グリーントランスフォーメーション(GX)を実現するために必要な投資をどう確保していくかだ。経済産業省が5月に出した「クリーンエネルギー戦略」の中間整理によると、今後10年で官民合わせて150兆円規模のGX投資が必要になる。政府はGX経済移行債を発行するなど、複数年にわたる長期的な脱炭素化支援を確約することで、民間企業の投資を促したい考えだ。
ただ、新国債はあくまで〝つなぎ〟との見方が強い。5月のクリーンエネルギー戦略に関する有識者懇談会で岸田文雄首相が「成長志向型カーボンプライシング構想」に言及したように、財源の本命は炭素税を含むCPと見られる。工程表は年内に示される予定で、今年中にCPの導入に向けた議論が進む可能性は高い。
同会議の方向性は自動車産業にとっても重要な指針になりそうだ。経産省のクリーンエネルギー戦略の中間整理では1年間で、電池製造に約6千億円、製造工程の省エネや脱炭素化で約1兆4千億円、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)など次世代自動車の導入で約1兆8千億円、充電ステーションや水素ステーションのインフラ整備で約2千億円の投資が必要になるとの見方が示された。CEV補助金やFCVのインフラ整備に対する補助金など一部で政府支援はあるものの、実現には自動車関連企業の大規模投資が不可欠になる。特に製造工程における二酸化炭素の排出削減は、炭素税の導入が浮上している中で最重点課題の一つと言える。
企業の成長と脱炭素の両立を実現する施策づくりが政府に求められる。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)7月29日号より