日本自動車整備振興会連合会(日整連、竹林武一会長)がまとめた整備業における2012~21年の労働災害事故状況によると、過去10年間の累計死傷者数は5653人(うち死亡は47人)だった。事故型別の発生割合をみると、「墜落・転落」の20.6%が最も高かった。死亡者数は「はさまれ・巻き込まれ」の23人が最多だった。重い車両を持ち上げる機器や高出力の電動工具を扱うことが多い整備士は、不注意で大きな事故を招きやすい。日整連は「作業中のちょっとした油断や判断ミスなどが災害事故を引き起こす要因になる」とし、引き続き安全確保の徹底を呼びかける方針だ。
21年の死傷者数は前年比30人減の556人(死亡は同1人減の4人)だった。減少はみせたものの、整備業に従事中の死傷者数は毎年500人台で推移しており、大きなトレンドは変わっていない。整備要員は今一度、常に危険と隣り合わせの状況にいることへの意識を再認識することが重要となりそうだ。また、自動車検査場での運転操作の誤りによって起きた事故にも警鐘を鳴らす。日整連ではギア操作のミスやアクセル、ブレーキの踏み間違いなどに、改めて注意を促している。
過去10年間の死傷事故の傾向をみると、墜落・転落、はさまれ・巻き込まれに続き、「転倒」の割合も高い。整備工場内ではさまざまな機器が置かれているほか、脱着した部品類などを一時保管する必要もある。整理整頓や使いやすいレイアウトに見直すことで、思わぬ事故を減らせるとみられる。
一方、過去10年間の死亡者数では「交通事故(道路)」が7人と2番目に多いことが分かった。整備士は工場内での作業だけでなく、公道での確認作業や車両の回送も日常的に行っている。整備の現場以外でも安全確認に注意を払う必要がありそうだ。
過去10年間の年代別の死傷者数で最も多かったのは60歳以上の1326人。12~20年の死傷者数では40~49歳が最多だったが、入れ替わった格好。近年は整備要員の高齢化が進んでおり、必然的に高い年齢層の事故が目立ったとみられる。年代別の死亡者数は40~49歳の15人が最多だった。
日整連では同統計を毎年更新している整備主任者研修の法令編のテキストに掲載している。こうした取り組みを通じて、整備事業者による労働災害の注意喚起を図っていく方針だ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)8月17日号より