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自動車業界トピックス

2023年1月から車検証電子化、ユーザー利便向上は確実

実務委託先は負担増を懸念

2023年1月から自動車検査証(車検証)の電子化が始まることに伴い、整備事業者が行う継続検査の事務手続きもデジタル化が一層加速する。新たに創設された「記録等事務委託制度」により、整備事業者は電子車検証への記録などを国に代わって行うことが可能となる。オンラインで完結した申請や通知などのため、運輸支局などへの来訪が不要となり、業務の効率化や顧客の利便性向上に期待が高まる。

整備事業者からは「個社でやるメリットが今一つ見えない」などの声も

19年5月の改正道路運送車両法で、来年1月から車検証を電子化するとともに、継続検査に関する車検証への記録などに関する「特定記録等事務」と車検証の変更記録に関する「特定変更記録事務」を、国土交通大臣が一定の要件を備える者に委託する記録等事務委託制度が創設された。

今年5月20日には、電子車検証の券面記載事項やICタグの記録事項、記録など事務の委託手続きなどを定めた道路運送車両法施行規則などの一部を改正する省令が公布。同23日から記録等事務の委託申請受付が開始されている。

電子車検証の券面には、継続検査や変更登録などの影響を受けない「自動車登録番号/車両番号」や「車台番号」など基礎的情報が記載される。車検証の電子化に伴い、車両ごとに「車両識別符号(車両ID)」を新たに付与する。

ICタグには、車検証の「有効期間」「所有者の氏名・住所」「使用者の住所」「使用の本拠地」など券面非表示事項を記録。これらの情報は汎用のカードリーダーで読み取ることが可能だ。読み取り機能付きのスマートフォン(スマホ)にも対応する。

記録等事務委託制度の対象手続きは、特定記録等事務が継続検査で、特定変更記録事務が変更登録と移転登録(券面変更を伴わない場合のみ)となる。申請方式は電子申請で、窓口申請は対象外となる。

特定記録等事務の委託対象となるのは、指定自動車整備事業者と日本自動車販売協会連合会(自販連)、日本自動車整備振興会連合会(日整連)、全国軽自動車協会連合会(全軽自協)、行政書士、行政書士法人となる。特定変更記録事務は行政書士と行政書士法人が委託対象だ。委託要件としてパソコン、プリンタ、ICカードリーダーなどの機器とインターネット接続環境を整え、個人を認証するマイナンバーカードまたは法人向け行政サービス認証システム「GビズID」のアカウントを取得していることが求められる。

車検証の電子化はまず登録車からで、軽自動車は24年1月からとなる。特定記録等事務は、車検証への記録、車検証の返付、検査標章の交付などと定義する。委託申請が認められた記録等事務代行者は、国土交通省が今後提供する「記録等事務代行アプリ」を通じて、電子車検証への記録などを行う。検査標章の配布は12月から予定しており、配布申請もそれ以降となる。配布は100枚単位の予定だ。

紙ベースの現行車検証の場合、整備事業者は新旧車検証の交換や検査標章を受領するため最寄りの運輸支局などに行く必要があるが、車検証の電子化と記録等事務委託制度によって来訪は不要となる。

国交省では、電子車検証のICタグに記録される有効期間などをユーザーや整備事業者がパソコンやスマホで確認できる「車検証閲覧アプリ」を来年1月にリリースする。車検証情報ファイルの出力やリコールなどの情報も確認できるようにする予定だ。また、同アプリの利用ユーザーには車検証有効期間更新時期を知らせるサービスも開始する。

特定記録等事務の委託対象となる業界団体では、記録等事務委託制度への申請を行う方向だ。自販連では「ディーラー個社で行うことも可能だが会社規模によって難しいケースも考えられる。全国の支部で(特定記録等事務を行える)体制を整えることになるだろう」との考えだ。日整連も「ワンストップサービス(OSS)とセットで行うことで利便性を享受できるもの。申請する方向となる」という。OSSの代理申請業務を行っている全国の日整連支部が実務を請け負うかたちとなる。ただ、各団体の地方支部からは限られた人員の中での業務負担増を懸念する声も挙がる。指定自動車整備事業者は「個社でやるメリットが今一つ見えない」「実務の詳細が分かってから検討する」などと申請を躊躇(ちゅうちょ)する意見も少なくない。

特定記録等事務の委託を受けようとする場合の申請先は、運輸支局や軽自動車検査協会などとなる。また、委託申請について、現在は紙での申請だが、来年1月からはオンライン化する予定となっている。

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)8月18日号より