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自動車業界トピックス

国交省、大型車の排ガス試験・審査手法を見直し

厳格性と効率性を両立して不正根絶

国土交通省は、日野自動車のエンジン認証不正問題を受けて、大型車の排出ガス・燃費性能の試験方法と審査手法を見直す。厳格性と効率性を両立させた試験・審査のあり方を検討し、不正の根絶・再発防止を図る。見直しに向けた調査を行うため、2023年度の予算概算要求の新規施策に盛り込んだ。業界団体や自動車メーカーなどを交えた検討会の設置も検討し、法令整備を行う考えだ。

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日野で不正行為があった排出ガス性能の長距離耐久試験では、新品のエンジンを一定距離まで運転して走行距離ごとに排出ガスを測定。測定結果から長距離走行後の排出ガス性能を推定する。試験期間は短くて約6カ月で、長ければ約9カ月と時間を要する。

乗用車では、走行前の排出ガス測定値に規定の数式で算出した固定劣化補正値を使って長距離走行に代えて性能評価を行うことが可能だが、現在大型車に適用されていない。

こうした大型車の排出ガス試験の特性を踏まえて、国交省は乗用車と同様の試験方法を導入して効率化を図れないかなどの検討を行う見通しだ。

燃費試験については、自動車メーカーの試験結果を、事後的に確認する審査手法なども検討する。アイドリング時の燃料消費量を測定する試験では、燃料流量が安定してから始めることになっているが、日野では燃料流量の安定前に測定を行っていた。燃費に有利な条件となる「現場のノウハウ」としてあった。

国交省の関係者によると、そうした不正行為で測定結果が有利になるという特性をそもそも把握していなかったという。追加の不正行為発覚を受けて今月上旬から行っている同社への立ち入り検査と関係者へのヒアリングで初めて判明した。

国交省は3月、日野に対して認証審査時に不正行為が確認されたエンジンの搭載車両に関する型式指定取消処分を実施。その後の追加調査で新たな不正が発覚し、現在も立ち入り検査を継続して行っている。

当面の間、自動車局は日野に厳格な審査を実施していくが、審査期間が必要以上に長期化して同社と同局の負担も大きくなるという課題がある。型式指定の再取得まで取消処分を受けた対象車両の出荷・販売ができないため、同社の取引先企業などへの影響も深刻だ。こうした実情も踏まえて、厳格かつ効率性も考慮した試験方法や審査手法などの見直しを検討する必要があると判断した。

23年度の予算概算要求の中で、調査関連費用などとして3200万円を計上した。欧州など海外における排出ガス・燃費性能に関する試験方法や審査手法などを調べ、見直しなどの参考にできないかも検討する。必要となれば有識者、業界団体、自動車メーカーの関係者などで構成する検討会の設置も想定する。見直しの検討を進めて一定の結論を取りまとめた後、省令または通達を行う流れとなる。

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)8月30日号より