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自動車業界トピックス

国交省、不具合や障害相次いだ「特殊車両通行確認システム」改修

詳細な検証作業終了

国土交通省は、複数の不具合が確認された「特殊車両通行確認システム」について、再発防止に向けたプログラムの照査と必要な改修を行った。今後予期せぬ不具合が発見される場合に備え、今年度末までの期間を「集中改善期間」と位置付ける。車両登録から回答書の発行まで各段階において算定結果などに誤りがないか1件ごとに事後確認する。誤りが発見された場合は、正しい回答書を速やかに発行するとともに必要なプログラム改修を順次行うこととする。

国交省はデジタル化の推進で運送事業者などの利便性向上を図っている

4月に運用を開始した同システムだが、誤った回答書を申請者に発行する不具合が7月までに2つ発生していた。一つは、本来通行できない車両に通行可能の回答書を発行していた。もう一つは、本来通行できる車両に通行不可と誤った回答を行っていた。いずれも車両条件の確認に必要なプログラムが欠落していたことが原因と判明している。

同システムは、関東地方整備局が建設技術研究所と日立製作所にプログラムの開発業務を発注し、構築したもの。道路法に基づき国土交通相が指定した指定登録確認機関の道路新産業開発機構が、同システムを活用して利用者に通行可能経路の回答などを行っている。

国交省は、一連の不具合を受けて、再発防止に向けた同システムのプログラムの照査を7月半ばにも終える予定としていたが、照査の過程で新たなプログラムの誤りや欠落が判明。それぞれの原因究明や対策の検討などを行った結果、7月末まで時間を要した。

プログラムの照査では、同システムで作成した通行可能経路が、従来から利用されてきた「特殊車両通行許可システム」で審査されたものと同じ結果になることなどを行った。具体的には、車両の種類ごとに許可・不許可のテストデータをそれぞれのシステムに入力・算出を行い、結果が整合していることを確認した。

手数料徴収機能などテストデータを用いた検証が難しい一部の機能については、詳細設計書に記載された内容がプログラムコードに適切に反映されているかを再検証した。

また、4月1日から7月1日までに同システムで発行した1023件の回答書についても1件ずつ再確認を行った。例えば、分割可能な貨物の運搬の可否に誤りがないか、通行可能経路が起点から終点まで連続しているか、文字化けの表示エラーがないかなど各表示内容を漏れなくチェックし、回答書の発行機能に不備がないかなどの確認を行った。

プログラムの照査過程で新たに判明した不具合もすべて改修。誤った回答書を発行した申請者に、ただちに電話やメールで誤りを訂正して謝罪。誤った回答書の内容に応じて、通行中止の要請や正しい回答書の発行などを順次実施した。

国交省では、一連のプログラム改修・確認作業などを通じて、運用面で今後改善する必要がある事象も2点確認して公表した。1つは、車軸自動昇降装置を備え走行時に車軸数が変化するトレーラーなどは、車検証情報から走行時の軸数を読み取ることができないこと。次に、経路検索に利用する道路情報が更新された場合、更新前に検索された通行可能経路と、更新後の道路情報の整合が取れておらず、回答書に通行可能経路の一部が表示されないことだ。

それぞれの事象への現時点で可能な対処方法は、同システムの特設サイトで公開している。引き続き改善方法を検討の上、具体的な対策が決定しだい発表することとした。

特殊車両通行システムは、運送事業者などの申請者が特殊車両の重量や寸法などを登録することで、通行可能経路をオンラインで検索・確認できるもの。許可証と同等の効力を持つ回答書も作成する。従来の特殊車両通行許可制度は、運送事業者は1経路ごとに車両情報や発着地、経路などを申請する必要がある。行政の審査・協議、決済・許可証発行までに平均で約3週間の日数を要していた。通行も許可を受けた1経路のみとなる。同システムを利用することで、運動事業者などは業務の効率化やドライバーの安全運転確保などが期待できる。

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)8月31日号より