経済産業省は、31日に最終取りまとめを行った「蓄電池産業戦略」で電池材料を確保するために今後5年間で官民合わせて2兆2千億円の投資が求められるとの見解を示した。政府が目標に掲げているグローバルでの日本企業の年間製造能力600㌐㍗時を実現するには、リチウム38万㌧、ニッケル31万㌧などが必要になると試算した。埋蔵量が限られ、産出も特定の国に依存するレアメタル(希少金属)は、電気自動車(EV)の普及で引き合いの激増が見込まれる。日本としても鉱山権益の確保を念頭に、30年までに一定量をまかなえる体制構築を目指す。

日本の今後の電池戦略の方向性を示した。現在、20㌐㍗時の国内年間製造能力を30年までに150㌐㍗時に引き上げる。グローバルでは日本企業だけで600㌐㍗時の製造能力確保を目指す。この目標を実現するには、リチウムやニッケルのほか、コバルト6万㌧、黒鉛60万㌧、マンガン5万㌧が必要になるとした。
必要な材料を確保するために、今後5年間で官民合わせて2兆2千億円規模の投資が必要になるとしたほか、鉱山権益の確保に加え、供給網の中流の製錬工程を国内や有志国内に整備することも目指す。
合わせて30年までに材料開発を含めた電池サプライチェーン(供給網)全体で3万人の人材を確保する必要性も示した。工場の製造ラインにおける技能系人材で1万8千人、セルの設計といった技術開発で4千人などを見込む。
産官学が一体となった人材育成に向け、「関西蓄電池人材育成等コンソーシアム」を発足した。工業高校や高専で電池に関わる教育カリキュラムを導入するほか、高度分析装置などを用いたプログラムも実施する。他地域での展開も視野に入れ、電池産業が育成すべき人物像の具現化を進める。
現在のEVの車体価格の3分の1は電池コストが占めると言われている。レアメタルを安定して確保できる体制を構築できなければ電池価格が下がらず、EV販売に影響を及ぼす可能性も出てくる。政府として材料の確保や方針を明示し、日本企業の国際競争力の向上を目指す。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)9月1日号より