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自動車業界トピックス

〈ニュース知ったかぶり!?〉どうなる?今春の自動車税制

現行制度は年内据え置き 走行距離課税は見送り

Q 昨年末に与党「税制改正大綱」がまとまったね。今年度で期限切れになる「エコカー減税」は結局どうなるの?

A 今の基準のまま、2023年12月末まで延長されることが決まったよ。例年は、燃費性能の向上を踏まえて、2年ごとに基準を見直しているんだけど、今は半導体不足の影響で新車の納期が後ろ倒しになっているからね…。この状況でいつも通り23年度から基準を変えちゃうと、同じ車種でも登録や届出の時期で税額が変わってしまうかもしれない。不公平が生じたり、お客さんや販売現場が混乱するのを避けるためにも、年内は据え置くことにしたんだよ。

EVの普及をにらんだ新たな税制は要るが…

Q じゃあ、24年からはどうなるの?

A 電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)といった、いわゆる〝エコカー4兄弟〟に関しては、免税要件に変更はないよ。引き続き、2回目の車検まで自動車重量税は免税だ。

Q それ以外のクルマは?

A ハイブリッド車(HV)やガソリン車といったエンジンを搭載している車両は、減税基準は厳しくなるね。次のエコカー減税が期限切れを迎える26年の4月末までに基準を2回切り上げる方針で、最終的には「30年度燃費基準」を80%以上達成していることが減税の最低条件になるんだ。今は達成率60%以上から減税されるから、かなり厳しくなることになるね。

Q そんなに厳しくしたら、減税対象車が減っちゃうんじゃない?

A 最終年度の25年5月からは、30年度基準を75%以上達成している車には「本則税率」が適用されるよ。本則税率とは「本来の税率」という意味で、それ以外のクルマには本則税率より割高な「当分の間税率」が適用されるから、0.5㌧当たり自動車重量税が4100円かかるんだけど、達成基準を満たしている車は「エコカー」とみなされて、0.5㌧当たり2500円で済むんだ。経済産業省によると、優遇対象車の割合は今と同じ7割を保てるんだって。でも、これは1年間の時限的な措置だからね。「35年新車乗用車販売電動車100%」の政府目標があるから、次の税制議論では内燃機関車への風当たりはもっと厳しくなるだろうな…。

Q 「環境性能割」や「グリーン化特例」はどうなったの?

A 両方とも25年度末までの継続が決まったよ。環境性能割は、エコカー減税と同じように段階的に基準が切り上がって、最終年度の25年4月からは、登録車・軽自動車ともに30年度燃費基準を75%以上達成していることが減税の条件になるんだ。ただ、グリーン化特例は、現行制度のまま3年間据え置かれるよ。

Q 年末の議論で「走行距離課税」が話題になってたね。結局導入は見送られたけど、何がそんなに問題だったの?

A 走行距離課税の詳細が公表されたわけじゃないけど、名前からすると、車が走行した距離に応じて支払う税金が変動する仕組みと考えていいんじゃないかな。

一見、公平で合理的に見えるけど、自動車が主な移動手段になっている地方ユーザーや、長距離輸送を担う物流業者にとっては、事実上の増税になってしまうんだよ。それに課税技術自体も難しくて、海外でも地域や対象車を限定した導入にとどまっている。成功例は少ないね。財政当局としては、国内市場の縮小やカーシェアリングの普及を見据えてだったんだろうけど、あまりにも短絡的な課税案だったから、業界内外から反対意見が噴出したんだ。

Q 走行距離課税がナンセンスなのは分かったけど、EVへの課税手段って他にもあるの?

A 今回の議論では、搭載するモーターの出力とか、車両の価格に応じて枠組みを決めたらどうかって意見が出たよ。あとは車両単体の性能だけでなく、製造や廃棄まで含めた「ライフサイクルアセスメント(LCA)」全体で排出されるカーボン(炭素)への課税案とかもね。ただ、まだアイデアの段階だから、技術的な実現性と課税の公平性を両立できるか議論と検証を重ねる必要があるね。どちらにしろ今の排気量基準じゃ、内燃機関を搭載していないEVに課税できないから、新しい課税基準は必要だよ。

Q 次の自動車税制改正は3年後になるらしいけど、どんな議論が必要になるのかな?

A 足元の議論も大切だけど、10年後、20年後を見据えた長期的な展望を描くべきじゃないかな。電動化は大前提として、自動運転や電動キックボード、「空飛ぶクルマ」など、モビリティのあり方は今よりももっと多様化すると思うんだ。その時代に「自動車」というくくりで「所有者」に対して課税する今の税体系で本当に良いのか。また、道路の整備や補修は必要だけど、「受益者負担」の建前で、実質的に自動車ユーザーに費用を負わせているのもおかしい。自動車産業の将来像をしっかりと官民で共有し、その実現を後押しするような新たな税制を目指した議論に期待したいね。

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)1月16日号より