Q 改正道路交通法の施行で、7月から電動キックボードの交通ルールが変わったね
A 6月30日まで電動キックボードやペダル付電動バイクなどは、原動機付自転車(法定速度時速30㌔㍍)や、実証実験を行うために特例措置を適用した小型特殊自動車(同15㌔㍍以下)の車両区分に応じた免許が必要でした。7月1日からは、原動機付自転車の車両区分が細分化され、免許が必要な「一般原動機付自転車」のほかに、16歳以上であれば免許不要の「特定小型原動機付自転車」(特定小型)と「特例特定小型原動機付自転車」(特例特定小型)が新設されました。
Q 特定小型と特例特定小型の違いは何?
A 最高速度です。特定小型は時速20㌔㍍以下、特例特定小型は時速6㌔㍍以下で、走行中は車体の「最高速度表示灯」が特定小型の場合は「緑色点灯」し、特例特定小型の場合は「緑色点滅」することで周囲の車両や歩行者に存在を知らせます。特例特定小型は歩道走行もできます。速度制御装置を搭載して速度の自動切り替えが可能な車両もありますが、最高速度表示灯を走行中に切り替えることは認められず、必ず一時停止する必要があります。
Q 特定小型の基準にはどういったものがあるの?
A 車体構造では「長さ180㌢㍍以下、幅60㌢㍍以下」、定格出力では「0.60㌔㍗以下の原動機」を用いるなど複数の基準が設けられています。道路運送車両法の保安基準に適合していることのほか、自動車損害賠償責任(自賠責)保険(共済含む)の加入とナンバープレートの装着も必須です。
Q 特定小型の基準を満たさない電動キックボードは、どういった扱いになるの?
A 見た目は電動キックボードでも、一般原動機付自転車や自動車に該当しますので運転免許が必要です。勘違いしやすいですが、すべての電動キックボードなどが運転免許不要となるものではなく、歩道を走行することができるものではありません。
Q 特定小型の運転はヘルメット着用が努力義務なの?
A その通りです。ただ、警察庁は安全のためヘルメットの着用を呼び掛けています。日本自動車連盟(JAF、坂口正芳会長)では7月14日、電動キックボードの衝突試験を行い、結果をウェブサイトに公開しました。電動キックボードが街中で遭遇しそうな交通場面を再現し、走行速度やヘルメットの有無によって衝突・転倒時の危険度はどう変化するのか検証したものです。
Q 結果はどうだったの?
A ダミー人形を乗せた電動キックボードを時速20㌔㍍で高さ10㌢㍍の縁石に衝突させ、転倒時の頭部損傷値(HIC値)を計測しました。ヘルメット未着用時は、着用時と比べてHIC値が6.3倍となり、重篤な頭部損傷あるいは死亡するリスクが高い結果となりました。同様の速度で、静止している自動車にヘルメット非着用で衝突した場合、一次衝突のHIC値は低かったものの、転倒して地面に頭部を打ちつける二次衝突のHIC値では6346.3と非常に高く、頭蓋骨骨折や脳損傷、死亡のリスクが高いことが明らかになりました。
Q 電動キックボードに関する交通事故はどうなの?
A 警察庁の調べによると、2022年に発生した交通事故は前年比12件増の41件で、そのうち死亡事故は1件でした。警視庁管内における今年1~6月末の電動キックボードに対する取り締まり件数は1298件。改正道交法施行後の7月1日から15日まででは147件(暫定値)で、信号無視が最多でした。免許不要やヘルメット着用の努力義務などの「規制緩和」で、事故増加を懸念する声が多いことも事実です。国土交通省と警視庁は7月25日、都内で特定小型を対象とした全国初の街頭取締りを実施しました。
Q 取り締まりの結果は?
A 約2時間で取り締まった22台の特定小型のうち、9台がナンバープレート未装着など保安基準不適合車両でした。そのうち電動キックボードは3台で、自賠責保険も未加入でした。すべて個人所有のものです。一方で、シェアリングサービス事業者の電動キックボード13台はいずれも問題ありませんでした。
ただ、これから電動キックボードの利用が増えるにつれ、違反や事故が増えることも懸念されます。とくに日本は道幅が狭いうえに、市街地などでも大型車が多く走っています。自分はおとなしく車道の左側を走っているつもりでも、追い越し時に接触されたり、車体が小さいため大型車の死角に入り込んで衝突されたりと、思わぬ形で事故に巻き込まれる可能性もあります。一応、公道ならどこでも走れますが、自衛のため、道幅や交通量、大型車が多いかどうかなどを自ら判断し、リスクの高い道路は迂回するなどの自衛策を取ることも賢明な利用法と言えるのではないでしょうか。
Q 当たり前だけど、利用者には新しい交通ルールの理解と順守が求められるね
A 16歳未満の人が運転した場合、6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金です。車両の提供者も同様です。飲酒運転も当然ながら禁止で、罰則は5年以下の懲役または100万円以下の罰金などです。スピードが出ないからと言って安易に乗り回すと、高い代償を払うことにもなりかねません。道路標識にある補助標識「車両の種類」で、普通車が交通規制対象であること(対象でないこと)を示すものは、特定小型も交通規制の対象(同)となります。携帯電話を使用しながらの運転もダメです。特定小型は交通反則通告制度の対象となるので、交通違反(反則行為)をした場合はいわゆる「青切符」で処理されます。一定の違反行為を「3年以内に2回以上」行った運転者に対しては、都道府県公安委員会が特定小型運転者講習の受講を命じることとなっています。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)8月17日号より