日刊自動車新聞社

モビナビ学生 モビナビ転職

新規会員登録は現在受付を休止しております

企業の採用ご担当者の方は「モビナビの求人掲載」

メニュー

自動車業界トピックス

〈会見概要〉認証不正、トヨタ首脳 薄かった認証への意識

立ち止まり改善策徹底

 トヨタ自動車の豊田章男会長らは3日、型式認証の不正発覚を受け、大手町プレイスホール&カンファレンス(東京都千代田区)で会見した。主な質疑応答は次の通り。

―なぜ不正が起きたのか

豊田会長「原因は1つではない。企画から生産準備に至るまで、認証に関わるすべてのプロセスをまとめたところ、約1年などのリードタイムがあると分かった。この全体像を把握している人は自動車業界に1人もいない。多くの人が関わり、曖昧(あいまい)で属人的な技能に頼るケースも多い。そんな中、最終試験で問題が発覚し、最後に大きな負担をかけてしまった。現段階で作業を標準化し、基準を整理した。『異常管理』ができるには年末くらいまでかかる」

―車種が増える中、現場の負担が大きかったのか

カスタマーファースト推進本部・宮本眞志本部長「例えば『ヤリスクロス』では、車の形状などは国内専用ではないため、法規への適合という意味ではそこまで負担感はない。とはいえ、立ち止まり、現場の意見も聞いて課題を見つけ、改善を回していきたい」

―不正への受け止めは

豊田会長「残念であり『ブルータス、お前もか』という気持ちだ。トヨタは完璧な会社ではない。改善の余地があると気づきを得られた。トヨタグループ全体の共通の風土づくりに結びつける機会が到来したともいえる」

―なぜ発覚が遅れたのか

宮本本部長「国土交通省から1月26日に指示があり、1件ずつ調査し始めた。誰がいつ、どう試験したかデータを遡(さかのぼ)り、当時の人にも話を聞いた。もう少し早く発見できたのではという思いはあるが、調査は非常に難しかったと痛感している。6月末の調査完了に向け努力している」

―制度論を含め、自動車メーカー共通の課題感は

豊田会長「認証制度はメーカーや担当者、仕向け地でやり方やルールも変わる。日本で認可できた車が世界で最も厳しい認証を通っているとしたらシンプルになる。調査結果が分かった段階で日本自動車工業会に共有したい。お客さまのため、日本の自動車業界の競争力向上のため、国と自動車メーカーが制度の議論をできるといい」

―仕入れ先や販売店に伝えたいことは

豊田会長「当局に全面協力し、早い時期に(量産の)了解をいただき、生産再開できるよう全力を尽くす。現在、納期などでお客さまに迷惑をかけている。多くの方が関わる問題であり、当社の判断で納期を決められないことを理解いただきたい。問題のマグニチュードが分かった段階で対策を立て説明したい」

宮本本部長「継続生産車の3車種は本日、出荷を止めた。納期的にもご迷惑をおかけする。トヨタ東日本(TMEJ)の宮城大衡工場と岩手工場の2ラインに影響する。仕入先は200社ほど、2次仕入先などを含めると1千社以上にのぼる。1社ずつ補償を含め丁寧にコミュニケーションをとっていく」

―現場に不正の意識は

宮本本部長「断定できないが、お客さまにいい車を届けたい意識が勝り、より厳しい条件で開発している自負もあった。認証への意識が薄かったことは否めない。当社には『スピークアップ制度』という社員が申告できる制度があるが、そこに上がっていなかったのは事実だ。もう一度、社内で徹底する必要がある。現場からの声がなかったことを責めるのではなく、日頃からマネジメントが現場に行き、リスクを見ることが大切だ」

―エンジンの出力試験の事案は他と性質が異なる

宮本本部長「開発と同時に認証のデータを取っている他の事案と異なり、エンジンのケースは、認証試験として行い、出力が出ない原因を十分調査せずデータを調整して出してしまった。開発段階で何十、何百と確認していることが念頭にあった。開発リードタイムの短さも考えられる」

―ダイハツの不正に類する項目もあるのか

宮本本部長「エアバッグのタイマー着火という手法では、開発時に厳しい条件を再現しようとデータを出してしまった。ダイハツは認証試験でタイマー着火を使っており、両者は異なる。安全性は確認できており、安心してお乗りいただきたい」

―国交省のリリースは「虚偽データ」、トヨタは「データ不備」としている

豊田会長「言葉の使い方より、使う方の安全保護や業界の競争力強化につながることが重要だ。事実をベースに皆がそれぞれの役割でもっといい車社会をつくっていく」

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)6月5日号より