マツダは3日、認証不正に関する会見をベルサール御成門タワー(東京都港区)で開いた。毛籠勝弘社長と小島岳二取締役専務が出席した。主な質疑応答は次の通り。
―不正調査をどう進めたのか
小島専務「2403試験を対象に確認した。過去10年間分、すべての法規認証の書類、試験設備を洗い出し、担当者へのヒアリングも実施した結果、今回の5件の不正事案が見つかった」
―エアバッグでの不正では、指定されている「自然起爆」ではなく外部装置を用いて起爆時間を指定して展開する方法を用いた。調査の結果は
小島専務「該当期間には14件の衝突試験を実施した。このうち4件は商品改良モデルで、残りはフルモデルチェンジだった。調査の結果、(商品改良の)4件のうち、3件が外部装置を用いて実施していた。乗員保護の影響を精微(せいち)にするため、設計基準値での時間指定起爆が良いと(現場が)独自で解釈してしまった」
―エンジン不正は現行車種2車種で発覚した。原因は試験環境によるところが大きそうだが
小島専務「過去10年でガソリン、エンジン合わせて出力試験が38件あった。それら全てを洗い出したが、この2件のみが温度の状態が異常というか、実車状態を逸脱していた。そのため、環境を補正するために(ソフトウエアの)制御の方で合わせていたことが今回の調査で判明した。認証試験は、できる限り実車の環境に近づけて実施しているのだが、長い間テストを行うため、熱い空気が滞留する。外気の空気を室内に送り込んでいるため、外気温によっても違ってくる。これらの要因が重なり、実車状態から離れた状態が起こってしまった」
―不正のそれぞれの時期は
小島専務「衝突試験は2014年、16年、18年。エンジンの出力試験は18年、21年。その都度、現場の判断で誤ったことをした」
―日野自動車やダイハツ工業などでも不正があった。そのタイミングで気がつかなかったのか
毛籠社長「昨年春に他社の不正が出た時点で点検を始めていた。その過程で『認証に関する業務負担が大きくなっている』と現場から見直しの要望もあった。今年の1月初旬には現場のエンジニアから『同様のものがある』と私のもとに(話が)上がってきた。精微な検証が必要だと調査を進めていた最中に、管轄省庁からの調査の要請があり、その枠組みの中で進めていた」
―不正の真因は何か
小島専務「エアバッグの不正は、現場が『時間指定起爆であればデータを正しくとれる』『時間指定の方が設計基準に合っている』と解釈した」
毛籠社長「現場のエンジニアは、合理的に正しいことを追求したいと取り組んでいる。われわれマネジメント側の業務の手順書などが十分ではなかった。正しい手続きに沿って現場が安心して仕事できる環境づくり必要だ。ただ、調査結果を見ると、組織ぐるみの隠ぺい、悪意ある改善ではなかったと認識している」
―2車種が出荷停止になった。販売店やサプライヤーへの影響は
毛籠社長「ユーザーの注文分は3500件が出荷停止の影響を受ける。影響期間については、今の時点では(いつまでと)言えないが、速やかな再開に向け取り組んでいく。サプライヤーの損失については誠意をもって当社がカバーしていく」
―業績への影響は
毛籠社長「出荷停止の影響と、信頼を損ねたことでのお客さまの反応、それぞれであると思う。現時点では測定できない」
―リコール(回収・無償修理)の可能性は
小島専務「現在は考えていない。国土交通省と相談し、適切な対応を取っていく」
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)6月6日号より