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自動車業界トピックス

〈岐路に立つ自動車税制〉自動車関係諸税の「簡素化・負担軽減」前に進まず

一向に深まらぬ国会論戦

2023年度予算をめぐる衆参両院の国会論戦で、今後の自動車関係諸税のあり方や見直し方針についての質問が与野党から相次いだ。野党は「走行距離課税」と「モーター出力課税」について政府見解を質したが、政府側は「与党税制改正大綱などを踏まえて検討を進める」(鈴木俊一財務相)などと〝安全運転〟に終始。自動車業界や自動車ユーザーが訴え続けてきた「簡素化・負担軽減」につながる発言はなく、論戦は一向に深まらなかった。

自動車関係諸税をめぐる国会議論は深まらなかった

国民民主党の大塚耕平参院議員は「走行距離課税などはエコカーの普及阻害など多くの問題を内包している」と指摘。「現行の自動車重課税化は景気に対してマイナスだ」とも述べ、政府の認識をただした。これに対して、鈴木財務相は「重課税化を含め、いわゆる走行距離課税やモーター出力課税については、政府として導入の方針を決めているものではない」と答弁した。鈴木財務相は一方で「エコカー減税」「環境性能割」について、半導体不足などによる長納期化を踏まえ「異例の措置として23年末まで現行制度を据え置いた」と説明した上で、現行基準を長く維持すると「政策インセンティブ機能が低下し、制度趣旨が没却されてしまう」とし、24年1月から燃費基準達成度の下限を段階的に切り上げていく方針を正当化した。

地方税を所管する松本剛明総務相も「車体課税は地方にとって貴重な財源だ」と強調。21年度決算で車体課税2兆6千億円のうち約2兆円分が地方財源となっていることを示しながら「車体課税のうち地方財源になる税収は1996年度をピークに減少傾向にある」とし、主な減収要因として、自動車販売台数の減少とともにエコカー減税などを挙げた。また、電気自動車(EV)が一律に自動車税の最低税率を適用されていることについて「『税負担の公平性の観点からは課題がある』と自治体から指摘されている」とし「地方の財政需要に対応した財源の安定確保が重要な観点である」と、車体課税の軽減には慎重な立場を改めて示した。

自由民主党の佐藤啓参院議員(税制調査会幹事)は「毎年の税制プロセスは年末の一時期に限定されている。論点が多岐にわたるものは、その論点を丁寧に整理しながら十分に議論、検討するのは難しいのではないか」と問題提起した。佐藤議員はその上で「公平中立で、自動車業界の活力を維持・強化できるような税制を実現するためには、静かな環境で議論を進めていく場が必要ではないか」と松本総務相の見解を尋ねたが、明確な回答は得られなかった。

昨年末にまとまった与党「税制改正大綱」では、自動車関係諸税について「次のエコカー減税の期限到来時(25年度末)までに検討を進める」とある。ただ、「受益者の広がり」「保有から利用へ」「インフラの維持管理の必要性」「国・地方を通じた財源の安定確保」「原因者負担・受益者負担の原則」「利用に応じた負担の適正化」などいくつもの条件がつく。「年末の短期間ではなく、腰を据えて議論を」(中堅議員)との声は増えているが、今のところ政府・与党にその気配はない。電動化に代表される自動車の技術革新が世界で進む中、旧態依然とした日本の自動車関係諸税を刷新するリーダーシップが政治に求められる。

(平野 淳)

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)4月8日号より