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自動車業界トピックス

〈岐路に立つ自動車税制〉高騰止まらぬガソリン価格

補助金の延長だけでは 目を逸らさずに税制含めた議論を

 円安や原油高で燃料価格が高止まりし、車を移動手段とする地方部の家計が圧迫されたり、運送事業者の経営が苦しさを増している。政府は当面、補助金の延長などで対応する方針だが、揮発油税の理不尽さや「トリガー条項」の凍結に疑問や不満を抱く国民が増えつつある。国民受けを狙った小手先の対応ではなく、将来的な電動車シフトをにらんだ車体や燃料課税の抜本見直しに向けた議論の必要性が高まりつつあるが、政府・与党の腰は重い。

経済産業省によるレギュラーガソリン1㍑当たりの全国平均小売価格(4日時点)は186円50銭。前週に続いて過去最高を更新した。5月から右肩上がりで、家計や運送事業者の負担は増すばかりだ。不満の矛先が向かうのを避けようと、政府は9月末に終了予定だった「燃料油価格激変緩和措置」を年内まで延長する。7日から石油元売り各社に支給する補助金を段階的に拡充し、レギュラーガソリン1㍑当たりの全国平均小売価格を10月中には175円程度の水準に抑えることを目指す。

ただ、足元の燃料高は原油相場に加え、円安による影響が大きい。日本は原油のほぼ全量を輸入しており、円安が続く限り、燃料価格が高止まりすることは避けられない。

ガソリン(揮発油)の場合、4割近くが税金だ。「揮発油税(国税)」や「地方揮発油税(地方税)」「石油石炭税」「地球温暖化対策税」「消費税」がかかる。

このうち、揮発油2税は、道路整備名目で本則税率よりも高い「暫定税率」が適用され、ほぼ2倍(1㍑当たり53・8円)になっている。本来は道路整備名目の根拠になっていた「道路特定財源制度」が解体された時点で本則税率に戻すのが筋だが、政府は「当分の間税率」として課税し続けており、「当分の間」の定義もない。

JAFは例年、燃料税制の抜本見直しを訴えている

「トリガー条項」への関心も再び高まりつつある。同条項は2010年に導入された。ガソリン価格が3カ月連続で1㍑=160円を超えた場合、揮発油税の上乗せ税率分、25.1円の課税を停止し、同130円になると解除するもの。

ただ、東日本大震災の復興財源を確保する名目で11年4月から凍結されている。単年度で予算を手当てすれば済む補助金と異なり、トリガー条項を発動すれば税収の目減りが常態化する。このため、政府は「買い控えや駆け込みが起きる」などと理屈をつけて解除を渋っている。

日本自動車連盟(JAF、坂口正芳会長)は8月31日、従来から政府や関係省庁に対して訴えてきた「当分の間税率の廃止」と「タックス・オン・タックス(二重課税)の解消」を改めて声明として発表した。年末に向けて自動車税制改正要望の柱の一つに掲げ、世論を喚起する考えだ。

野党も政府に対し、激変緩和措置の延長などガソリン価格高騰対策に関する要請活動を活発に行っている。立憲民主党はトリガー条項の一時的解除などを、国民民主党はトリガー条項の凍結解除に加え、当分の間税率と二重課税の廃止を西村康稔経済産業相に求めた。

自民党の萩生田光一政務調査会長は8月29日、「昨今のガソリン価格の推移や国民生活、経済全体に与える影響に危機感を持っている」と語った。トリガー条項の凍結解除を求める自民議員もいるが、あるベテラン議員は「税制の議論も含め、年末にかけてやっていけばいい」と話した。

国民民主の玉木雄一郎代表は、ネット番組で「ガソリン価格は減税することで引き下げられる余地はまだ残っている。税制改正が今こそ必要ではないか」と訴える。燃料高とともに重く理不尽な税負担の実態が知られつつあるが、政府・与党は補助金で押し切る考えを変えていないようだ。

(税制取材班)

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)9月8日号より