自民党税制調査会(宮沢洋一会長)が「エコカー減税」と「環境性能割」の現行基準を来年末まで据え置く方針を固めたことに、自動車業界の関係者からは「ユーザーや販売現場の混乱を避けることができる」と安堵の声が聞かれた。一方、政府の税制調査会で浮上した「走行距離課税」や「出力課税」が、税制改正大綱にどう盛り込まれるかにも関心が寄せられている。
半導体不足などを背景に新車納期の長期化が続く中、エコカー減税の現行基準が約1年間延長される方向について「ひとまずほっとした」と、業界団体関係者は胸をなでおろす。正確な延長期間は7カ月間で、2024年1月から基準が厳しくなる。要望とはかい離があり、手放しで喜ぶことはできない様子だ。また、例年の年度末ではなく、暦年で基準が切り替わるだけに、販売にどう影響するかも未知数だ。税制改正における重要項目の一つは方向性が見えたものの、走行距離課税や出力課税などの「穴埋め増税」には「断固反対」の立場で自動車団体は一致している。
日本自動車工業会の永塚誠一副会長は「特に地方在住者や物流事業者など移動距離が多い方々の税負担が増え、電動車の普及にブレーキをかける。移動のたびに課税される税制は到底、理解を得られない」と強調する。後藤収税制部会長(日産自動車理事渉外担当役員)は走行距離課税について「うまくやれている事例は世界にない」とした上で「長期的なコンセンサスをつくり、受益と負担の関係でどういった絵を描いて、何に税をかけるのか、まずは時間をかけて議論するべきだ」と語る。さらに「その(議論の)答えとして走行距離課税が出るならまだ分かるが、単に(税収の)穴埋めであれば、あまりに安直すぎる」と強い不満を示す。
地方のある自動車販売会社の関係者も「クルマを日常生活のインフラとする地方にとって走行距離課税はあり得ない。将来的な導入が決まれば、お客さまの購買意欲やクルマの使い方などにも大きな影響が出るだろう」と懸念を示した。
世論や業界の反発を受けているとはいえ、財政当局は走行距離課税を諦めたわけではない。財務省OBでもある宮沢会長は、走行距離課税に反対する意見が多いことを認めつつも「35年に向けて、それなりの基準を目指してやっていくことも大切だ。地方の大事な税収であることも配慮しなければいけない」と語る。税制改正大綱は週内にもまとまる見通しだ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)12月14日号より