主な自動車関連団体の2023年度税制改正要望が出そろった。今年はエコカー減税の拡充・延長などに加え、政府・与党内で進む「中長期的な見直し」をにらんだ方向性を各団体とも示していることが特徴だ。電動化が進むと燃料税収が減り、手をこまねいていれば「電力税」「走行税」などの名目で重い税負担が固定化しかねない。各団体は「モビリティがもたらす新たな経済的・社会的受益者の広がりを踏まえた税制」(日本自動車会議所)など、モビリティ(移動性)と産業競争力などに目配りし、受益と負担の関係も含めた抜本見直しを政府・与党に強く求めていく。
総合団体である日本自動車会議所は、税体系の簡素化・負担軽減を前提に「今後のモビリティ社会を見据えた受益と負担の再構築が必要」と主張した。また、電動化などに伴う燃料税収の減少分については「穴埋めを自動車ユーザーに求めるべきではない」とした。日本自動車工業会は、中長期な見直し方針として、一般財源化で課税根拠を失った自動車重量税の廃止や、政府が目標に掲げる「35年までに新車販売で電動車100%の実現」に向けた税体系への改革を求めた。
販売系では、日本自動車販売協会連合会が電動車に関して「税・予算両面から強力な支援措置を講ずるべき」とした。全国軽自動車協会連合会は、軽自動車や二輪車が国民の最も身近な足となっている実態を踏まえ、中長期的にもさらなる税負担増に反対した。
ユーザー団体である日本自動車連盟(JAF)は、中長期的な議論を「自動車ユーザーが納得できる税制となるよう検討を求める機会」と捉え「すでに過重な負担を強いられている自動車ユーザーに、さらなる負担を求めることはもはや限界に来ており、断固反対」と主張した。
中長期的な見直しは今年の税制改正論議で方向性が固まるわけではない。政府・与党は毎年末にまとめる「税制改正大綱」をもとに議論を積み重ねていく。まずは今年末の大綱で、中長期的な見直し方針がどのように記述されるかが焦点となる。20日の参議院予算委員会で、鈴木俊一財務相は「厳しい財政事情」を前提に、走行距離課税の導入を「一つの考え方」と述べるなど前哨戦は始まっている。中長期の自動車関係諸税のあり方をめぐる攻防が幕を開けた。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)10月24日号より