自民党の税制調査会(宮沢洋一会長)は30日、党本部で小委員会を開き、車体課税について議論した。今年度で期限切れを迎える「エコカー減税」などの見直しや「走行距離課税」「出力性能課税」といった新税構想の是非が焦点だ。出席議員によると「地方部や物流での混乱を招くとして、走行距離課税に反対する声が多かった」と、自民党内でも導入に慎重な声が相次いだという。
来年に期限切れを迎えるエコカー減税と「環境性能割(自動車税/軽自動車税)」に関し、経済産業省は現行基準のまま1年に限り延長することを求めている。足元の物価高や新車の納期長期化を踏まえての要望だ。一方、財政当局は「2035年新車販売電動車100%」を掲げる政府目標との整合性を理由に、ガソリン車の減免措置の見直しを求めている。出席した議員からは「サプライチェーン(供給網)が混乱している中で増税はするべきではない。来年は現行基準でいくべき」との声が多かった一方、「燃費効率の良い車を優遇する制度を来年から実施するべき」との意見も挙がったという。
また、税調幹部や財政当局が検討を示唆している走行距離課税をめぐっては、自動車ユーザーや業界からの反発が日増しに強まっている。経産省も「自動車が生活の足である地方や運送業界の負担が増え、経済活性化の足かせとなる」として導入に反対の立場だ。25日には岸田文雄首相が国会で「議論があることは承知しているが、政府としてこうした具体的な検討をしているということはない」と火消しに走ったが、12月中にまとめる税制改正大綱に盛り込まれない保証はない。
宮沢税調会長は小委員会終了後、報道陣に対して「EVを促進すべき状況の中で『走行距離課税など方向づけをしないで欲しい』との意見が最も多かった」と認めつつも「将来の姿として表に出しておくのは大事だ」と、引き続き可能性を探る意向を示した。
税調は同日の議論などを踏まえ、早ければ来週にも税制改正要望を仕分けする「マルバツ審議」に入る。ただ「例年、車体課税は議論が最後までもつれ込む。電動車時代の新しい税体系を作るとしている今年もそうなるだろう」(経産省幹部)との声もあり、車体課税は「マル政(政策的問題として検討)」として扱われ、大綱のとりまとめまで激しい攻防が続きそうだ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)12月1日号より