自民党の税制調査会(宮沢洋一会長)は18日、党本部で総会を開き、2023年度の税制改正議論を始めた。自動車分野では、見直し時期を迎える「エコカー減税」などの租税特別措置と並行し、電動化に伴う新たな税体系のあり方も議論される見通しだ。すでに「走行距離課税」の是非など前哨戦は始まっており、12月中旬にもまとまる「税制改正大綱」の内容が注目される。
自民税調は今後、省庁別に分かれた部会などから改正要望を聞き取る。その後、改正要望ごとに議論を重ね、政府側とも調整しながら結果を大綱としてまとめる。
会議で調整がつかない改正要望は「政策的問題」として、「インナー」と呼ばれる非公式幹部会などで税調幹部が政府側と調整して落としどころを探る。
自動車業界や経済産業省はまず、エコカー減税などの優遇策を現行基準のまま1年に限り延長することを求める構え。物価高に加え、半導体不足で新車の納期が延びており、年度をまたぐと販売現場が混乱する恐れがあるからだ。一方、地方財政審議会(総務相の諮問機関)が16日に示した意見書では、出力を基準とした電気自動車(EV)の自動車税率を提案したり、古い車両の自動車税などを上乗せする「経年車重課」の対象にハイブリッド車(HV)を加えるよう求めるなどした。
新たな税体系として攻防が予想されるのは走行距離課税の是非だ。政府の税制調査会が先月末に検討の必要性を指摘した。財務省は、自動車の燃費向上や減税措置などで自動車税収(車体と燃料の合計)がこの15年間で約1兆7千億円減少したと試算。今後も燃料税収の先細りは避けられないとして、減収分を自動車ユーザーからの税金で穴埋めする狙いがある。
これに対し、自動車業界側は「国民的議論のないまま拙速に導入することは断固反対だ」(永塚誠一副会長)と猛反発。政府内からも「自動車が生活の足である地方や運送業界への負担が増大し、経済活性化の大きな足かせになる」(経産省)と異論が出ている。
経産省はまた、自動車ユーザーに道路整備費用を実質負担させる「受益者負担」の原則を見直すよう求める。この原則はもともと、自動車税収を道路整備に充てていた「道路特定財源制度」の課税根拠だが、同制度が2008年度いっぱいで廃止されたにもかかわらず、政府・与党内では「道路整備費は自動車ユーザーの負担」とする考え方が根強い。
経産省の要望は、この考え方自体を問うものだ。日本経済団体連合会(経団連)や自動車業界も、自動車税制のあり方を根本から見直し、国民的議論を尽くすよう政府・与党に求めている。
走行距離課税に関しては、批判的な報道がすでに相次いでおり、自民党の一部からも世論の反発を懸念する声が出始めた。税調幹部の判断が注目される。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)11月19日号より